「監督や俳優を引き付けて離さない題材。その味付け。」危険な関係(1959) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
監督や俳優を引き付けて離さない題材。その味付け。
いろいろな方が映画化・ドラマ化しているそのうちの一本。
フランス版だけでも、同じ監督がジャンヌさん版以外に2本撮っているし、それ以外でもカトリーヌさん版もあるとか。ハリウッド版が有名らしいが、ドラマでヨン様版もあるらしい。それぞれの演出・演技を比較して楽しむこともオツかもしれない。
それだけ、監督や俳優からすると、演じてみたい、撮ってみたいと思わせる題材なんだろうと思います。
お互いの浮気を容認してゲームのように楽しんでいる夫婦という、普通の生活を送っている人間にとってはとんでもない話。そこに純愛が絡んできて様々な展開になっていく。そんな普通でない話にいかにリアリティを与え、観客を話に引き込んでいくか、演出と演技の妙が冴えわたるのだろう。とんでもないプレイボーイにいかに同調できるように演じるか、夫婦が未亡人との恋を賭けの材料にする、そんな設定やその顛末にリアリティを持たせるか、中途半端では絵空事で終わってしまう。
この映画に関しては、マリアンヌ役のアネットさんが美しい。それと対比するように妻役のジャンヌさんの毒々しさが際立つ。白雪姫と継母みたい。
ですが、演技と言う点で言えば、アネットさんはただ人形のように美しいだけ。
ジャンヌさんの方が、毒々しさを振り撒いて圧巻です。しかも、その毒々しさの合間に見せるふとした表情。なんだかんだ言いながらも、上映禁止になりながらも、新しい版ができても、この映画が廃れないのは、ジャンヌさんのこの演技につきると思います。
プレーボーイ役のジェラ―ル氏は恋する場面ではうっとりするのだけど、後半話が急展開する段になると拍子抜け。マリアンヌのその後を知って動転する場面とか、もう少し丁寧に描いて欲しかったです。暖炉に倒れる場面も、如何にもとってつけー1960年代の撮影技術ではしょうがないんだと思いますがー、滑稽でした。後で知ったことですが、この時すでに病に侵されて、この後お亡くなりなる。体調が悪くて、演技・演出・撮影を急いだのかな?有名な俳優で、名作にも出ていらっしゃるのに、私はまだこの作品のみ鑑賞。ジェラール氏の演技を云々することはできないのだけれど、もったいないと思ってしまう。
恋の駆け引きとか淑女の振る舞いとか、フランスらしさに酔えるし、見どころいっぱいのはずなのに、どうも拒否感の方が強いです。ラストでスカッとしてしまうなんて…私って自分で思っていたより恋や愛に純情なのねと自己認識した映画でした。
そう言いながら、自分だったらこの題材どう料理するかな、なんて思いを巡らしていたりします。やっぱり良い材料が揃っています。それだけに、偉そうですが、材料を活かし切れていない感がぬぐえずちょっと残念に思うので☆3つです。