勝組負組奇譚 バルガス平原の決闘

解説

太平洋戦争の終局間際、海外為替市場における日本円の暴落に乗じた国際密輸団がブラジル在住の日本人移民を相手に日本軍の大勝利を宣伝、日本円の売却に狂奔した、いわゆる「勝組負組事件」に取材したセミ・ドキュメンタリ映画で、この事件に直接関係した移民が主体となって製作された。佐藤吉映が原作を書き、これをドン・セバスチャン・サトーと戦前戦中、俳優として活躍した大日方伝が共同で脚色、サトーが監督した。撮影はルイス・フーレミグ、音楽はポール・ヤング。主演は大日方伝、イタリア系のジョルジア・マヤ、スイスから帰化したヴェレーネ・スタルデアなど。日本語解説は徳川夢声があたる。

1956年製作/76分/ブラジル
原題または英題:Ea Paz Volta A Reinar

ストーリー

祖国日本の敗戦に混乱したブラジルは、勝組負組の対立が激しく流血の惨事も少くなかった。酒田譲治(大日方伝)はサン・アントニオ郊外ファゼンタ牧場の監督で、将来は牧場主の娘ジュリア(ヴェレーネ・スタルデア)の婿に見込まれている日本人移民であるが、ジュリアは前科者ジョンの一味に誘拐された。勝組の小杉の兄が円売りの首領川平の悪計にかかり牢につながれ、彼の老父も円売りに脅迫されて困っているのを聞いた酒田は、小杉の家に行った。そこにいた円売りはジョンに応授を頼み、帰宅した小杉を混えて拳銃戦となり、小杉は捕えられた。その頃ジュリアが監禁されている川平の家では、川平、ジョンたちが集って、親日派の市長を倒し、勝粗の日本人の家を破壊し、その後で円札を売りつけることを相談し、明日決行することを決めた。酒田は小杉のことで川平のところへ直接談判に出かけたが、そこで監禁されているジュリアを発見し、彼女を助け出して川平らの悪計をしった。酒田は単身川平に挑戦した。朝もやのコーヒー園に、逃げる川平を追う酒田、それを追う川平の子分たち、遠くに警官隊の呼笛もきこえる。壮絶な拳銃戦が展開され、酒田も川平の拳銃に傷ついたが川平一味は警官隊に捕縛された。平和に還った牧場で酒田とジュリアはともに祖国ブラジルを愛することを誓った。

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