「佐藤仁美&大谷亮平」道(1954) いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
佐藤仁美&大谷亮平
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二人の主人公が表題の俳優にそっくりで、かなり驚いたのがファーストインプレッションである。
監督フェデリコ・フェリーニは名前だけは以前から存じ上げてはいたが、やはり今作品が映画館に掛かるということならば観ねばならないと、本当ならば“瘭疽”の治療に行かねばならぬところをこちらに選択したのだがはっきりと正解だったと思い込める、流石世界の名作であった。
特にヒロイン役の女優の演技の秀逸さは群を抜くレベルである。とぼけた仕草があれほど愛らしく、しかしどこか悲しげでニヒリスティックな佇まいに心を奪われてしまう。ロードムービーでもある今作は、その行く先々での二人の関係性に変化を持たせながら、それが不幸への切符である印象を端から印象付けているので、ストーリーが進む程に、より悲しくメランコリックさを強調させながら、それでもヒロインの健気さや生きる必死さを、観客に訴えかけるように頑張る姿勢に心を激しく打たれ続けるのである。そしてそれとは逆に男の卑屈さや粗野、そして狡賢さはこれまた類い希なる極悪さを強調させ、だからこそラストのカタルシスへと誘う演出に、唯々見惚れてしまうばかりだ。哀愁や悲哀を全て羽織って、それでもヒロインのあのトンチキな仕草に救われることでの心の持ち様は、さすが名監督の掌で転がされているが如く、心を弄ばれてしまう。やはり名作はいつの時代も人間の心を掴んで離さないものだと、改めて敬服するのみである。
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