「性への目覚めが瑞々しく、鮮やかに切り取られている傑作」早春 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
性への目覚めが瑞々しく、鮮やかに切り取られている傑作
瑞々しい感覚で青春の青い性の目覚めを描く
中卒で地元の公衆温水ブールに就職した15歳の男の子
中々にイケメン、ズバリ美少年
女性からモテまくりで羨ましい限り
しかし職場の先輩の綺麗なエロいお姉さんには相手にされない
物語としてはそれだけだ
21世紀に生きている我々からするとなんとナイーブなことかと思うかもしれないが、これが舞台のいくら大都会ロンドンでも1970年当時はその年頃なら普通のことだったのだろうと思う
マイク役のJ・モルダー・ブラウンが素晴らしく、この映画のテーマをその整った顔、その細く綺麗な肉体が写っているだけで体現しているといっていい
冒頭の赤いペンキが結末の惨事を予告して、更に惨事の前には緑色の壁を真っ赤にまで塗ってみせる
白い無彩色の雪の公園、同じく白い無彩色な空のプールが、ラストシーンの血の赤、コートの黄色、水の青の色彩と対比されて、我々はその美しいを鮮烈な思い出としてこの光景がマイクと共有される
この色彩の使い方が見事だ
スーザンのヌード看板と水中での自慰しかできなかったのが、実際に彼女の裸体にしがみつき妄想が叶った時の彼の脳裏には、最早スーザンの裸体しかにない
その色彩が狂おしい性衝動のなかで渦巻いているのだ
若い男子の性衝動は止めようがない
就職したところが悪かったというか
彼が奥手過ぎだつたのか
もちろんプールが舞台なのは、人が服を脱ぎ裸になるところであり、大量の水は性への連想を予定してのことであり、空のプールに水を流し込む行為は性行為そのものの暗喩だから
それ故に、そこに舞台が定められているのだ
同時代の庄司薫の青春小説「狼なんか怖くない」
や「赤頭巾ちゃん気をつけて」等の作品の雰囲気と、とても似ていると思う
何十年ぶりに懐かしく読み返したくなった