「金があっても過去は買い戻せない」危険を買う男 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
金があっても過去は買い戻せない
上はオスカー・ワイルドの言葉でこの映画の最後に映し出されていた。タカに利用されて殺された若者コスタのことを思った。でもコスタは刑務所で出会ったかっこいい大人(ベルモンド)に教育され自分を客観視できるようになり、大人に誉められ夢を持つ喜びも持つことができた。ベルモンドもタカも一匹狼だが方向性がまるで異なる。ベルモンドはいつも柔和でちょっと笑みがある表情。冷静沈着だが若者をないがしろにする男への怒りと復讐の思いを強く感じた。その思いがオスカー・ワイルドの言葉につながるんだと思った。
この映画の最初、ロッテルダムでベルモンドが雇い主から受け取った札束が入っていたジェラルミンのアタッシェに1964年東京オリンピックのシールが貼ってありました。亀倉雄策さんデザインの素晴らしいロゴ!その時のオリンピックも東京の町をメチャクチャにしたけれど、利権と金と嘘にまみれた今のオリンピックよりずっと良かったんでしょう。
エッグスタンドに半熟卵を5個並べてパンを浸しながらの朝食場面は好きな箇所。今度真似しようっと。
ベルモンドは常に薬指&小指(両手の場合も)に指輪をしている(香港映画でも真似されてる)。そのごつい指輪がベルモンドの大きくてあったかそうな優しい手の中で頼もしい存在感があってとても素敵。もう一つ素敵だったのは、アロハシャツ着用の脱獄ビジネス野郎の囚人の部屋。そこにあったイームズのラウンジチェアとオットマンがあり(囚人の部屋に有り得ない!)、そのチェアにベルモンドが座ったこと。大ぶりのチェアなので逞しい男性によく似合う。
「恐怖に襲われた街」でもそうだが、ベルモンド演じる役は常に二つとか複数の案件を同時平行的に対処して片付けていく。すごいなあ。脚本が良いのだと思うけれど、もう全部のかっこよさをベルモンド自身に還元してしまう!
ヨーロッパは縦列駐車が普通だから車止めるのも頭から?アクション映画でいちいちバックで駐車するのはスピード感ないしカッコ悪いから?確かに車は頭から駐車して発進する時はバックの方がずっとかっこいいな、ということを3回目鑑賞の今日思いました。(2021.8.5.)