「初めて遭遇した映画芸術」パッション(1982) HAL2005さんの映画レビュー(感想・評価)
初めて遭遇した映画芸術
映画における「物語」を否定しつつ、それを描き、絵画の「光」を礼賛しつつ、挫折し、人間関係は続きながら壊れ、その逆はない。政治闘争、夫婦の不仲、階級闘争、金銭問題、親しいものとの決別、レープ、未完の映画、強制される撮影、始まりも終わりもしない不毛な時間、昼と夜、普遍性と時代性。それぞれ対立し、独立し、分節できるものを一つのものとして扱ったのがこの映画だ。多くの語られるべき物語の間にある関連性は感じられなかった。だから、これはきっと、ドキュメンタリーなんだと思う。その瞬間、1982年のフランス・スイス・ポーランドの現実にある問題を真っ白なキャンバスに描いた漆黒の絵画のように強烈で単純な何かだと思う。僕はそれが芸術だと思う。
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