「疲れた吐息に象徴される性の快楽と退廃のイマジネーション豊かなフェリーニ映画」カサノバ(1976) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
疲れた吐息に象徴される性の快楽と退廃のイマジネーション豊かなフェリーニ映画
フェリーニ監督に、これまでの人間性の発露が圧倒的とは言えないものがある。あるのは性に疲れた男の人生の悟りに至る諦観の心境であり、それを風刺劇として同情し自省するフェリーニの映画創作の不可思議さである。肉体の快楽と退廃は、より重苦しく人の心まで静かに諭すものか、それに対するフェリーニの自己批判を感じた。映像のイマジネーションは衰えず、独自の世界観は見応え充分で、ニーノ・ロータの音楽もこれ迄とは打って変わって内省的な幻想曲風でユニーク。それでも歳を重ねないと理解が及ばないのも感じ、今の自分には無理。ただ、この不思議な映像美の吸引力は、世界でフェリーニ監督ただ一人の存在価値があると思われるので、評価は高い。
1980年 12月23日 スバル座
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