劇場公開日 2022年10月21日

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「まさに「不屈」そのものをストレートに描いた一作」暴力脱獄 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5まさに「不屈」そのものをストレートに描いた一作

2022年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

名作映画の代名詞ともなっている本作タイトルだけど、そこから想像できるような、ポール・ニューマンが肉体にものを言わせて看守達を殴り倒し、脱獄する痛快なバイオレンスアクション大作…、などでは決してなくて、むしろニューマン扮するルークは、同じ牢獄の囚人達や看守達から受ける理不尽な抑圧、暴力にじっと耐えて見せます。彼はただ単に耐え忍ぶだけでなく、自分を押さえつけようとする相手に対して真っ正面から立ち向かいます。何の決めぜりふも巧緻な作戦もなく。強大な敵に無謀にも素手で立ち向かう彼は、当然のことながら痛めつけられ、床に倒れ込みますが、それでも決して弱音も見せず屈服もせず、再び立ち向かいます。その姿を最初嘲笑っていた囚人達も徐々にその姿に畏敬の念すらも抱くようになります。

ルークは「不屈の男」ではありますが、チャールトン・ヘストンのような巌の肉体を備えている訳ではなく、また時には愛する存在に手を差し伸べてもらえない哀しみを感じさせもしますが、ジェームス・ディーンのようにその寂しさ、悲しさを素直に表現することもありません。その表情だけで彼の揺るぎない精神性を表現しているニューマンは、やはり名優であると納得せざるを得ません。

もちろんルークの不屈の物語としても楽しめる本作ですが、作中には明示されているものも暗示されているものも含め、さまざまな宗教的要素がちりばめられており、さらに深い精神性を感じさせます。ルークの囚人仲間を演じた、ドラグライン(ジョージ・ケネディ)がルークとの関係をどのように締めくくったのか、その語り、役どころが実に素晴らしいです。

「なんか恐そうな映画だなぁ。暴力描写はやだなぁ」と躊躇している人にこそお勧めしたい一作です。ただ男性世界ならではの、「無茶をして男を上げる」描写もあるので、そこは注意!

yui