放浪の王者(1930)
解説
ジャスティン・ハントリー・マッカーシー氏作の「我れ若し王者なりせば」及びそれに基づくウィリアム・H・ポスト氏、ブライアン・フーカー氏合作ルドルフ・フリムル氏作曲のオペレッタ「放浪の王」を発声映画化したもの。「摩天楼の巨人」「男の正体」のハーマン・J・マンキーウィッツ氏が脚色して台詞を書き加え、「ワルツの夢」「父と子」「最後の歌」のルドウィヒ・ベルゲル氏が監督した。キャメラは「サンダーボルト(1929)」「人生の乞食」のヘンリー・ジェラード氏とレイ・レナハン氏とが担任した。主役はジーグフェルドの舞台にこの役を勤めた喜歌劇俳優デニス・キング氏で、助演者は舞台出身のジャネット・マクドナルド嬢、「ハニー」「パラマウント・オン・パレイド」のリリアン・ロス嬢、「フーマンチュー博士」正続編に出演したO・P・ヘギー氏及びワーナー・オランド氏でローフォード・デヴィッドソン氏、アーサー・ストーン氏等も出演している。全編テクニカラーで彩色されているトーキー・オペレッタである。
1930年製作/アメリカ
原題または英題:The Vagabond King
ストーリー
西暦1465年、フランス王国の首都パリは強大なブルガンディー侯の軍勢に包囲されて、落城の日も目睫の間に迫っていた。当時パリの陋巷にフランソア・ヴィヨンという愛国の血に燃ゆる乞食詩人がいた。彼は剣をとっても当代無双の達人であった。彼は国王ルイ11世の腑甲斐なさを痛嘆して悲憤梗概し、国を挙げ上下一致してこの困難に当たるべきを説いていた。彼を王者の如くに仰いでいる乞食や浮浪人共は一様に彼の説に傾聴していた。中でも女乞食のユゲットは深くヴィヨンを愛して彼のためには身命をもなげうつ覚悟でいた。ある時王はパリを救う者は陋巷より出でん、という天文博士の予言によって姿をやつして浮浪人共の巣窟を訪れた。時の大将軍ディポオは秘かにブルガンディー侯と結んでフランス王国を滅ぼし己が諸侯の一たらんとする野望を遂げんとし、王姪カトリイヌ姫を拐かしてブルガンディー侯の許に人質として送ろうと企てた。それをヴィヨンに妨げられたので憤ったティポオはヴィヨンを殺そうとして巣窟に訪ねた。そして却ってヴィヨンのために刺されて倒された。その様を見ていたルイ王はヴィヨンこそ星占いの救い主と信じ彼を捕えしめた。ヴィヨンは眠り薬を飲まされ翌朝眼醒むれば身は宮中に在って髭は剃り落とされ美服をまとわせられ、王よりモンコルビエの伯爵の称号を賜り、7日間だけフランス王国の大将軍に任ぜられた。その代わりに彼は8日目の朝には浮浪人として絞首されねばならないのであった。彼は喜んで承諾し宮中に泊ることとなったが、彼とカトリイヌ姫とは深く恋し合う仲となった。彼は宮中に泊り得べき最後の晩に、敵軍からの勧降使を追い返して名残りの大饗宴を催した。さきに死んだと思われていたティポオは意外の軽傷だったので傷も早く癒り、浮浪人共がヴィヨンは獄裡に呻吟しているものと信じているのを利用し、ヴィヨンに恋しているユゲットその他の者を使嗾して饗宴の席に紛れ込み、ルイ王を虜にせんと計った。ヴィヨンは巧みにティポオの計略の裏をかいたが哀れなユゲットはティポオがヴィヨンを刺さんとして揮った刃に命を落した。ヴィヨンはティポオを血祭にあげ、浮浪人共を引具してブルガンディー軍の陣中に切って入り、勝利を得て城中に引きあげた。約によって王はヴィヨンの死刑を命じた。しかし彼の代わりに死刑を受くる者があればヴィヨンの命は救おうと言った。だが何人も身代わりになる者はなくヴィヨンは絞首台上の露と消えんとした。その刹那カトリイヌ姫が身代わりになるといって躍り出た。姫の真情とヴィヨンの助命を乞うてやまぬ群集の熱意に王も心を動かされて、ヴィヨン釈放を命じた。ヴィヨンはカトリイヌ姫を擁して陋巷へ帰り、再び放浪の王者となったのである。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルドウィッヒ・ベルガー
- 脚色
- ハーマン・J・マンキウィッツ
- 原作戯曲
- ジャスティン・ハントリー・マッカーシー
- ウィリアム・H・ポスト
- ブライアン・フッカー
- 台詞
- ハーマン・J・マンキウィッツ
- 撮影
- ヘンリー・ジェラード
- レイ・レナハン
- 音楽
- ルドルフ・フリムル
受賞歴
第3回 アカデミー賞(1930年)
ノミネート
美術賞 |
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