「受け手に優しい」バニーレークは行方不明 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
受け手に優しい
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兎にも角にもスタイリッシュな映画だった。登場人物の内面や実在が最後まで宙吊りにされる緊張感はさながらヒッチコック『サイコ』を彷彿とさせるし、頻発するサスペンスフルなロングショットは手癖の領域にまで咀嚼されたオーソン・ウェルズ『黒い罠』と形容できる。
しかし偉大なる先駆者たちの技法を発展的に継承しようなどという殊勝な目論見はなく、気持ちいい箇所だけを拾い上げ、誇張させている感じ。よく言えばスタイリッシュ、悪く言えば軽薄。
とはいえせめぎ合うユーモアとシリアスが異様な緊張を生んでいたラストシーンは、この映画が軽薄だからこそ成立しえたものだろう。フィルム・ノワールみたいなお堅い作風の中にあんな異常者が出てきたらユーモアが勝ちすぎて台無しになってたと思う。
冒頭のスタッフクレジットの演出は今見てもなお鮮烈だ。細部まで粋な遊び心が利いている。スタイリッシュな作風に関してもそうだが、受け手に対してかなり優しい映画だなあと感じた。
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