白熱(1949)のレビュー・感想・評価
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映画という娯楽の一つの完成形!!
凶悪なギャングの暴力と破滅を描くフィルム・ノワールの古典的名作。
主演はギャング映画のスター、ジェームズ・キャグニー。監督は「犯罪映画の巨匠」ラオール・ウォルシュ。
抜群に面白いッ!!
冒頭からテンポ良く展開される列車強盗、逃亡先の山小屋での仲間との軋轢。主人公を追う捜査官との夜道のカーチェイス。刑務所からの脱獄計画と主人公に近づく潜入捜査官。裏切った仲間とのケジメ。新たなチームを率いての大規模な現金強奪計画と、それを阻止すべく動く捜査官達との最終決戦。
「観客を1秒たりとも退屈させまい」とする役者や制作陣のプロ根性の結晶。ケイパー物のエンタメ作品に於いて必要な要素が全て詰まっており、その全てが高水準で一切の無駄が無い。鑑賞中、幾度となくハラハラさせられ、同時にワクワクさせられた。文句なしに名作と呼ぶに相応しい作品だろう。
これだけ目まぐるしく展開していく濃密な内容にも拘らず、それらを2時間以内の尺に収めてしまう脚本の構成力の凄まじさには驚嘆させられる。この作品を目の当たりにしてしまうと、昨今の尺が伸び続けるハリウッド大作らに見習ってほしくなる。
主人公コーディ・ジャレットのキャラクターが良い。残忍で凶暴、仲間に対しても非情な性格で、疑り深く頭もキレるが、強烈なマザーコンプレックスの持ち主でもある。幼少期に母親の気を引く為に演じていた精神疾患による頭痛が現実の物となり、今では定期的に視界が歪んで立てなくなる程の頭痛持ち。
そんな複雑さを持つコーディを演じたジェームズ・キャグニーの、正に“白熱”した演技の数々が光る。子供のように無邪気でありながら、同時に果てしない邪悪さを感じさせる笑み。母親に対する愛情と執着心の深さから、彼女の死を聞かされ、絶叫して暴れ回る幼さの狂気。暗闇からバーナやファロンの前に突如として現れる様はホラー的。
ラストで逃げ場を失い、追い詰められた末に不気味な高笑いを上げてガスタンクを爆発させての自爆。母親から言われ続けてきた「世界一になる」の約束を果たすべく、「やったー!母さん!俺は世界一だー!」と無邪気に叫ぶ姿は、母に執着し続けたコーディの最期に相応しい強烈さ。直後のファロンの「コーディのやつめ。世界一になって派手に散りやがった。」という締めの台詞も合わさってGOOD。
潜入捜査官ファロン役のエドモンド・オブライエンも素晴らしい。常に変化し続ける状況に対処する臨機応変さには、彼の捜査官としてのプロの技術が活きる。急な脱獄計画の変更や、正体がバレそうになりながらも上手く取り繕う姿は、常にハラハラさせられる。電気系統に強いという特技を活かし、即席で古いラジオを発信機に作り替える様は、バラシに終わった脱獄計画の内容も踏まえており実に上手い。
この手のケイパー物では、警察側が詰めの甘い間抜けに描かれる事も多いが、本作の捜査局員らは全員優秀で、最善を尽くしつつもそれら全てをコーディが上回ってくる。時にはコーディの幼い凶暴性が、事態を思わぬ方向に向かわせるというパワーバランスが絶妙に良い。双方の格を落とす事なく、だからこそ最後までどちらが勝つのかと緊張感を保って物語が展開される。
75年前の作品ながら、あらゆる要素の脅威的な完成度の高さ。フィルム・ノワールに留まらず、映画としても一種の完成形と呼ぶに相応しい名作だった。
何故、Blu-rayが存在せず、DVDは廃盤状態なのだろうか?これほどの作品が埋もれてしまうのは、あまりにも勿体ない。
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