紐育の囁き

解説

「噂の女」「赤い鳩」と同じくノーマ・タルマッジの主演映画で原作はヒュー・スタニスラウス・ステンジ作の舞台劇、それを「サンダーボルト(1929)」「女の一生」のジュールス・ファースマンが脚色し、「西部戦線異状なし」「裏切り者」のルイス・マイルストーンが監督した。助演者は「赤い鳩」「噂の女」のギルバート・ローランド、「盛り場の大蜘蛛」「西部戦線異状なし」のジョン・レイ、「鉄骨エロ騒動」のリリアン・タッシュマン、メアリー・ドーラン、ロスコー・カーンス等で、カメラは「アリバイ」「軍曹と腰巾着」のレイ・ジューンが担任である。

1929年製作/アメリカ
原題または英題:New York Nifghts

ストーリー

コーラス・ガールのジルにはフレッドという歌謡作者の良人があったが、良人が酒ばかり飲んで怠けているのでどうしても彼女がわずかな給料のうちをさいて暮らしを立てて行かなければならなかった。フレッドが仲間のジョニーとある歌を執筆した時、これを喜んだジルはさっそく自分が出演する劇場の演出者ジョー・プリヴィディのところへその作歌を持って行った。かねてからジルに横恋慕していたジョーはある下心からこれの上演を承知した。ジルはこの喜びを伝えに舞台裏に待つフレッドの所へかけつけた。ところがそこに意外な有り様を彼女は見た。信じていた良人フレッドはルーシー・デイという他のコーラス・ガールを抱擁していた。良人は小屋がはねてからあるナイト・クラブで会おうと約束した。ジルはその約束の時間に間違いなくナイト・クラブへ行った。だが約束した良人は2時間待っても来なかった。待ちあぐんだ彼女が帰った後フレッドはジョニーと泥酔して現れた。ちょうどその折りそこへ居合わせたジョーは、フレッドの様子を見、好機至れりと一策をめぐらすことになった。彼は自分の部下であるクラブの支配人に手入れがあるかしたくしておけと命じた。間もなく一隊の警官が乗り込んだ。そしてルーシーと一室にいたフレッドは拘引された。ジョーは保釈金を積んでフレッドを助け出したが、それは親切からではなく演芸新聞のネタにするためであった。ジョーの策略はみごよに功を奏して翌朝の演芸新聞にはフレッドの醜聞が載せられた。そして事情を知らぬジルはこれを読んで裏切られた口惜しさで一杯だった。フレッドが悄然と帰って来た時、彼女はその鬱憤を彼の前にぶちまけた。そして自分も他のコーラス・ガールのように贅沢な生活をするのだと行って家から出ていった。それから6カ月過ぎた。ジョーの寵愛をうけてジルは暮らしていたが、ある時乱痴気騒ぎの席上で一酔漢がジルに戯れたことから争いが起こりジョーはその男を射撃してしまた。ジョーは警察に連れていかれたが、ジルも証人として彼に従って行った。ふと彼女はその警察で2人の探偵に連れられて入って来た男を見た。それは紛れもなくフレッドだった。ジルは警部に乞うて彼の身柄を引き取った。フレッドの話すところによるとこうして警察などへ来るのも彼の仕事が成功して身が治まりかねるためだとのことであったが、ジルにはそれが痩せ我慢であることがハッキリ判った。そしてフレッドは問い詰められて遂に嘘であることを告白した。彼のこうした態度はジルに憐憫の情を起こさせた。そして彼女はこの気の毒な良人を再び以前のように援けて行こうと決心した。監禁を解かれたジョーはジルとフレッドがニューヨークを去ろうとしていることを知った。あくまでジルを占有したい欲望に駆られているジョーはそこでフレッドをジルから離そうと4人の無頼漢を雇って彼をまた無実の罪に陥れようと計った。だがその計画もフレッドの難を聞いて駆けつけたジョニーの犠牲的好意によって失敗に終わった。しかし執拗なジョーはそのくらいのことでは諦めなかった。彼はフレッドが危うく逃れたと聞くや彼を列車に負う覚悟をした。ジルとフレッドを乗せた列車が発車した時ジョーが姿を現した。2人が相対している最中、列車はトンネルに入った。フレッドはおもいがけなくポケットにあった短銃をジョーめがけて発砲した。明るくなってみるとジョーの姿がみえない。だが間もなくそれは彼は警官に捕らえられたためと判った。幸いジョーに弾丸が当たっていないのでフレッドは罪人とならずに済んだ。そしてようやくジョーの魔手から開放されたジルとフレッドは互いに新しい生活に入るべく誓うのであった。

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