劇場公開日 1963年7月5日

「鳥が襲ってくるホラー」鳥 HAL2005さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5鳥が襲ってくるホラー

2023年11月16日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

興奮

 最初はとても退屈だった。何故なら、最初はこの映画がどういうものなのかが掴みにくかったから。
 主人公の美しい女性は親が太い典型的な自由奔放なアメリカ娘だが、そんな彼女が恋に落ちて、男の歳の離れた妹に鳥を贈るというのが冒頭のあらすじだが、ヒッチーの癖に全く怖くない。小粋で軽快な会話をダラダラ続けていて全然面白くなかった。さらに、これは彼の映画の持病なのだが、出てくる人物がステレオタイプ過ぎて共感できない。ところが、中盤になると、ぐんぐん面白くなっていった。
 この映画は簡単にいうとゾンビではなく鳥が人を襲うホラー映画だ。ヒッチコックはたくさんの鳥が人間を襲うという実際の事件の恐怖以外にも、田舎者ならではの排他的な雰囲気や、当時の典型的な女性の持つ、弱さ故の凶暴さなども描こうとしていたが、どれも大量の鳥が人を襲うことよりは恐ろしくなかった。でも、ホラー映画にはそういう要素を持たせることができると学べた。
 この映画を観て僕は、改めてヒッチコックは魔法使いだと思った。彼の作る映画は、印象に残るシーンには必ず、力強く彼ならではの独特で力強く、雄弁な映像を仕上げてくる。それを観ると、映像の魔法とはこのことかと納得できる。
 ヒッチコックの映画に出てくる女優は演技のできないイメージがあるが、ティッピ・ヘドレンはできる人だった。表情の演技が良かった。
 それ以外には何もなかったが、純粋な映像体験だった。ヒッチコックの魔法を今までで一番濃く感じた。

HAL2005