「犯罪組織に妹を殺された西部男の壮絶な復讐劇!後半30分からの始まる怒涛のアクションが凄い!」トラックダウン ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
犯罪組織に妹を殺された西部男の壮絶な復讐劇!後半30分からの始まる怒涛のアクションが凄い!
兄妹で営む西部の牧場生活を嫌って家出してLAにきたティーンの妹が着いて早々に騙されて、高級コールガールを斡旋する犯罪組織に売られてのし上がる初めてから一転して悲劇が怒る場面の強烈な描写と、彼女の捜索に来た兄貴のタフで大胆な行動が、テンポ良く活写された上出来のアクション活劇になっている。
最初に見たのは昔の12チャンネル(今のテレ東)の平日午後2時から3時半に放送されていた90分枠の映画番組『午後のロードショー』で、CMを抜くと事質60分強くらいのバージョンだったが、子供の頃だったので、コールガールになった妹のベッツィ(吹き替えは、ガンダムのフラウ・ボゥ役で知られる鵜飼るみ子さん)が、サディスト野郎に暴行を受ける場面は、彼女の悲鳴が消えてゆく演出も衝撃でおっかなびっくり見ていた。
今回見直して感じたのは、約100分の作品でベッツィが犯罪組織に入りコールガールになるまでの部分にかなり尺をとっており、捜索に来た兄貴が真相に近づきで組織から命狙われる(この時点でベッツィ殺されたのは知らない)まで60分近い構成になっておりそこからは、アクションのつるべ打ちになるのだが、テレビ放送ではカットされていたベッツィのドラマ部分も単調にならず描写されていたのが意外な点だった。
特に組織のボスの情婦(彼女もコールガール出身)が、ベッツィを説得して仕事を指南するメンターもしくは姉のような感情を持って絆を深める場面と裏切り者として無残に殺害される(顔をオーブンで丸焼きにされる場面は強烈!)などを通して一見華やかに見える彼女たちの姿は、多くのカットで鏡もしくは鏡面に写し出される画面構成が、その生き方の虚実の残酷を際立たせている。
見せ場としては兄貴が組織からの襲撃を受けてから始まる後半30分は、怒涛の展開と趣向を凝らした銃撃アクションが描写されて痛快!特にエレベーター構内で左右のエレベーターが上下に行き交い交差する銃撃戦は、日本の黒沢清監督も著書で言及しているほどに、カット割も含めエモーションがあり面白い見せ場になっている。
ラストの荒野での対決も直線的な構図でウエスタンしていて良い。
主役のジム・ミッチャムは父親の名優ロバート・ミッチャム譲りの大柄な風貌をしていて西部劇定番のウィンチェスターライフル(ジョン・ウェインでお馴染み)を構える姿やアクションも悪くないが、ややモッサリな印象でこの作品以外に代表作がないのは、2世俳優の難しいさを物語る。(ちなみに父親のロバートは、ホーボー(『北国の帝王』でお馴染み)しながらボクサーしていた経歴があり、当時ではハリウッドでは伝説級にケンカが強くて、ロケ先のバーで主演女優に絡んできた米兵三人を電光石火のごとくでKOしてしまうなどの逸話がある。(その女優はデボラ・カー)
それ以外にLAで彼女と知り合い一夜をともにして情をかわす、若いチンピラを『白バイ野郎ジョン&パンチ』でお馴染みのエリック・エストラーダが演じおり、小心ゆえに彼女を守れなかった贖罪もありタフな兄貴に振り回されてながらも協力して闘うツッコミ兼儲け役で印象的
若い家出人を保護や援助するボランティア組織の女性職員も最初は兄貴にぞんさいな態度をしていたが、真摯な姿に絆されチームとして捜索と復讐「協力する展開で、冷静に考えると無茶苦茶にも思えるが、多くの若い人(特に女性)達が、犯罪組織などに食い物にされて消えてゆく姿を見てきて傍観者では居られなくなったのだろうと思わせる。(日本でも家出人を保護する団体に因縁をつけて嫌がらせ行為する最低な男達がいるね)
監督のリチャード・T・ヘフロンはアクション作品が多くて演出はテンポ良く強烈な暴力描写も上手くこなしていて、本作も水準以上の作品に仕上げている。
テレビドラマがメインの監督ではあるが、映画作品もビーター・フォンダと組んだ『未来世界』や『アウトローブルース』(テレビ映画もあり)などの良作があり、脚本家として有名なラリー・コーエンが、トラブった現場を引き継いだ『探偵マイク・ハマー 俺が掟だ!』(1982年)などは、監督の代表作でB級ハードアクションの超快作で日本でもファンの多い作品で、ジョージ・ペパード主演のハードボイルドアクション『刑事ニューマン・復讐のレクイエム』も悪くない出来(ペハードは、これ以降不調時代へ復活はテレビのAチームから)
気になるのは、構成の問題もあるけど妹のベッツィを死に追いやったサディスト野郎がその後に制裁を受けない点と兄貴が妹の死を知るのは、劇場中でかなり後になるので、主役の怒りの発火点としては弱いかも(観客はとうぜん知っているのけど)
一見華やかな夜の繁華街の闇を描いた社会派の『ハードコアの夜』(1979年)や凶悪な娼婦ヒモが大暴れする犯罪アクション『ザ・モンスター』(1982年)などに先んじる作品としても近年だと『ランボー 5 ラスト・ブラッド』(2019年)などに通じる、一見の価値がある復讐アクション物の快作