「王子ヒヒ!巨大セイウチ!一角原始人!サーベルタイガー!」シンドバッド虎の目大冒険 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
王子ヒヒ!巨大セイウチ!一角原始人!サーベルタイガー!
レイ・ハリーハウゼン特撮の1977年の作品。
“シンドバッド三部作”の3作目。
都シャロックに帰港したシンドバッド。
旧知の世継ぎである王子に会おうとするが、我が息子を王位に就かせようと目論む継母である魔女の呪いにより、ヒヒに姿を変えられてしまった。
王子の妹である姫から助けを乞われたシンドバッドは、ある賢者の知恵を借り、解決策のある極北の神殿へ向かう…!
賢者が住むのは『インディ・ジョーンズ/最期の聖戦』のクライマックス舞台にもなったペトラ遺跡、最終目的地は世界の果てにある極寒の神秘の神殿。
シリーズ最高の製作費を注ぎ込み、スケール的にも尺的にもシリーズ一番。
賢者が旅の仲間に加わったり、美女ヒロインが二人居たり(タイロン・パワーの娘とボンドガール)、敵がこれまでの男ではなく女になったりと新機軸を出そうとしているが、
勿論本作も素直に楽しいが、さすがに3作目、設定や展開はマンネリ化してきた。
シンドバッド役はあのジョン・ウェインの息子だが、残念ながら活躍や影が薄い。
登場キャラのお間抜け感も目立つ。シンドバッド一行の目的地を探ろうとする魔女は変身薬で鳥~小人に姿を変えるも、あっさり捕まる。魔女から秘術を聞き出そうとする賢者だが、一応危険な魔女だというのに見くびり、今度は自分がピンチに。挙げ句の果てに秘密を知られてしまうも、魔女は奪われた変身薬の量が足りず足だけ鳥のまま…。
ある意味賢者も魔女も目立つが、本当に賢者なの…?? 本当に恐ろしい魔女なの…??
まあドラマ部分は二人の美女ヒロインだけを見ていよう。
今回登場するハリーハウゼン・モンスターは…
地獄からの使者、グール!
黄金の機械像、ミナトン!
変身薬によって巨大化した大蜂!
極寒の海に棲む巨大セイウチ!
氷の中から目覚めたサーベルタイガー!
しかし今回、敵モンスターより、シンドバッド側のキャラの方に見せ場たっぷり。
王子が姿を変えられたヒヒと、一角の原始人。
ヒヒは実在の動物であるが、全編ストップモーションで演出。元が王子なのでチェスをしたり、器用に物を食べたり、
敵かと思われた一角原始人はシンドバッドたちに協力する優しい心の持ち主で、動作が愛くるしく見えてくる。力も強く、最後はサーベルタイガーと戦ってくれる。(その戦いで命を落とすが、シンドバッドたちは全く悼まないのは、オイ…!)
両キャラ、シンドバッドたちとの絡みも多く、ハリーハウゼンのダイナメーション演出はますます円熟!
1977年と言うと、『SW』や『未知との遭遇』で、ハリーハウゼンに憧れた世代が台頭し始めた頃。
ハリーハウゼンは次作の『タイタンの戦い』で引退。
この巨星が如何に古くから長きに渡って映画史に偉業を残してきた事か!