「今だからこそ観る価値のある作品かと思います。」エレファント・マン 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそ観る価値のある作品かと思います。
当時、リアルタイムで上映されていた時はまだ小学生でショッキングな映像に興味を引かれるだけでしたが、その後テレビで何度か観賞していますが、作品のメッセージ性を確りと感じ取る所まで至らず今日に至りますが、それでも大まかに覚えているのはやはり印象深い作品だからでしょうね。
そんな「エレファント・マン」を初めて劇場観賞しました。で再観賞は約30年振りぐらいです。
で、感想はと言うと、面白かったと良い方はちょっと語弊のある感じですが良かったです。
重いけれど改めて良い作品で、いろんな事を確りと考えさせられる作品です。
当時はあのエレファントマンの格好はちょっとしたブームになり、いろんな漫画作品なんかでも、蔑まされた人物の描写にはあの格好がモデルになってるのを見ました(「キン肉マン」のウォーズマンの幼少期とか)
いろんな偏見も含めての格好ではありますが、インパクトは絶大で映画としてのアプローチとしてはかなり上手いのではと思います。
実在の人物、ジョン・メリックの半生を描いていますが、モデルとなるメリックの悲劇を描いていて、障害の持ち、迫害されてきたジョンとアンソニー・ホプキンス演じるトリーヴス医師に出会ってから人として過ごすが様々な事件が発生する。
外見だけで人を差別する人間の醜さをまざまざと見せつけながら、人としてどう生きるか、どう接するかを教えてくれます。
特にトリーヴス医師が最初にジョンに出会った時の涙とジョンが大勢の人に追い掛けられ、トイレで"私は人間だ"と大声で訴えかけるシーンは胸熱。
切なくて、涙腺が緩みます。
実存の人物、ジョン・メリックは難病による外見の奇形に苛まれて、様々な迫害を受けますが、今から40年前の作品ですが、かなりショッキングに描いています。
地上波での放送がここ20年以上されていないのはいろんな倫理的問題で放送が困難かと思うのですが、この作品は人間の心根の部分における物語を描いているので、勿体ないと言えば勿体ない。
何も分からなかった頃はショッキングな描写に釣られて見てたりしても、この作品のテーマを理解すると単に描写だけで判断するのはどうかと思うんですけどね。
またトリーヴス医師に出会ってからジョンの環境は一変したけど、好奇心の目でジョンを見る人達の「優しさ笑顔の下にある偽善」は人としての本質を突いている。
サーカスの興行主のバイツや夜警のジムの振る舞いなんかは物凄く腹がたちますが、貴族の間でジョンに合う事がステイタスみたいになって、ただ流行に乗っかったみたいに会いに来る貴族達の方がよっぽど黒い。
かと言ってケンドール夫人の様に振る舞えるかと言えばなかなか難しい。
人としてどうあるべきか?人をしてどう行うべきか?と今観ても問い掛けてきます。
ラストもある意味で自殺ではありますが、人として幸せな時に終える事は今までのジョンなら考えられなかった事。
なので、このラストは個人的には納得ですし、良いラストかと思います。
トリーヴス医師を演じるアンソニー・ホプキンスは大好きな「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士がドハマり役でもうアンソニー・ホプキンス = レクター博士のイメージですが、若い頃のアンソニー・ホプキンスは結構貴重。
でも、やっぱり医者なんですねw
ジョンと出会った時に涙するシーンは美空ひばりさんが歌唱中に意図的に涙を流す映像を思い出しました。
やっぱり名優は一味違いますし、その力量を堪能出来るのもこの作品の醍醐味かと思います。
また、監督のデヴィッド・リンチは「イレイザーヘッド」や「ツイン・ピークス」なんかでも有名で「カルト映画の帝王」と呼ばれてますが、エレファント・マンを観ている限りでは全然カルトでは無いんですよね。
アプローチがカルトなだけでw、ツボを押さえたクセになる作り方が個人的には良いんですよね♪
子供の頃には縁日でたまに見かけた「見世物小屋」も今は人権問題で殆ど現存せず、また劇中の様なサーカスの住人達も今では殆んど居ないかと思います。
ただ、個人的には何でもかんでも人権問題を大上段に振りかざし、反対の声を高らかに叫ぶ風潮も正直どうかと思う。
その人達の食い扶持というんだろう観点で言えば、必ず保証がされる訳では無いし、やっている人達だってプライドを持って取り組まれている方も多い。
「笑われているのではない。笑わしているんだ」と言う事なんですよね。
話は少し逸れましたが、今観てもショッキングで切なくてグッと来る物がありますし、改めた観る価値はあると思います。
古い作品なので知らない方もおられると思いますが、良ければ観て頂きたい作品です。