「現状を受け入れるか、現状を変えるか」仔鹿物語(1946) 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
現状を受け入れるか、現状を変えるか
人生には、自分の意に沿わないこと、理不尽なことも多い。そういった現状に対して不平不満を述べても仕方が無い。現状の不満に対してやるべきなのは、現状を変える行動を取るか、現状を受け入れるかの二択になる。自責思考を持つか他責思考を持つかの差がここに出ているとも言える。そういったことを考えさせられる映画。
これは自戒の念も込めて書くが、会社に不満があるが転職も独立もしない(できない)で、愚痴ばかり言う会社員にも当てはまる。やはり現状の不満の多くは、能力・経験・努力不足など、自分自身に起因しているものが多い。周囲の人間は自分を映す鏡なので、周囲の人間が悪いように思えることも、その程度の人間と関わらねばならない自分のレベルの低さの表れだと考えられる。このように、過去の選択の積み重ねが現状の自分を作っているのだから、結局多くのことは自分に問題があると言える。そこを理解しないで文句ばかり言う人は、やはり子供じみている。
今作のグレゴリー・ペック演じる父親は、現状に不満を述べても仕方がなく、現状を受け入れるか行動あるのみだということをよく理解している。だから農作物が豪雨で駄目になっても、鹿が畑を荒らしても愚痴を言わない。そこに彼の大人としての成熟した精神性が表れている。息子のジョディも、子鹿との出会いを通じてこのことを理解したはずだ。つまり、彼は大人の階段を一歩上ったのだ。
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