劇場公開日 1949年6月14日

「優れた開拓時代版少年ビルディングスロマン」仔鹿物語(1946) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0優れた開拓時代版少年ビルディングスロマン

2021年4月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

作品名から、単なる少年と子鹿の
ほのぼのとした交流映画かと想像しながも、
キネマ旬報第9位との情報から
一度は観ておいてもいいかなと
軽い気持ちで鑑賞したので、
まずは内容の意外性に驚きが先行した。

そもそもが開拓民の話で、
開墾地が樹海の中の島であるとの
当時の開拓民の困難さを示す
優れたファーストシーンから始まった。

前半は、普段はいがみ合っても、
肝心な時は助け合うという、
人間社会の原点に根ざした人間賛歌に
溢れる展開。

そして後半は、
動物は自然界と共に生きる、それに対し
人間はその自然と対峙する生き物
である以上、
それに立ち向かう上での
厳しさと孤独との闘いが必要ながらも、
助け合えるのは人間同士しかないという
人生訓を示してくれた。

ある意味、今では
話としてありふれた内容ではあるが、
この手の物語の原点なのかも知れない。
この映画は、親子3人の丁寧な心象描写を
天候・動物・植物などの自然要素とも
上手く絡み合わせて描いた、優れた
開拓時代版少年ビルディングスロマン
と言えるだろう。

KENZO一級建築士事務所