恋の一夜

解説

「忘れじの面影(1930)」「ニュー・ムーン」のグレイス・ムーアが主演する音楽映画で、ドロシー・スピーアとチャールズ・ビーハンが書き下ろした物語を「三角の月」「舗道」のS・K・ローレンがジェームズ・ゴウ、エドモンド・ノースと共同脚色し、「令嬢暴力団」「海上ジャズ大学」のヴィクター・シャーチンが監督に当たり、「一日だけの淑女」「或る夜の出来事」のジョセフ・ウォーカーが撮影した。助演者は「ムーラン・ルージュ」「林檎の頬」のツリオ・カルミナチ、「紅蘭」「南風の恋歌」のライル・タルボット、モナ・バリー、ジェシー・ラルフ、ルイ・アルバーニ等である。

1934年製作/アメリカ
原題または英題:One Night of Love

ストーリー

アメリカ娘のメエリー・バレットは音楽で身を立てる志願で、僅かの貯金をはたいてイタリアへ赴いた。ミラノの町で彼女は同国の青年ビルと相識った。ビルはメエリーを愛した、貧しい彼女を助けようとしたがメエリーは喜ばなかった。そしてカフェーの歌い手となったが偶然音楽教師のモンテヴェルディに認められてその教え子となった。モンテヴェルディはその努力によって歌劇壇に送り出したラリーの恋に悩まされた苦い経験から、師弟間には恋愛禁制を建前とする。ところが烈しい練習の月日がすぎ、メエリーが舞台に立てる様になる頃には、お互いに恋し合うようになったが、2人共最初の建前が建前だけに、恋を自覚しないでいた。そしてウィーンで「カルメン」を歌うことになったとき、南米巡業から舞い戻ったラリーが、モンテヴェルディとメエリーの仲を嫉妬して油を差したことから、ようやく互いに愛を告白し合って結婚するまでになっていた2人は決裂してしまった。「カルメン」の成功を見てメエリーに惚れ込んだ紐育メトロポリタン・オペラ・ハウスの支配人の懇情があったので、メエリーはモンテヴェルディの手元を離れての1本立ちは無理であるにもかかわらず、紐育へ赴いたのであった。演じ物は「お蝶婦人」であったが、モンテヴェルディの指導の無い今、度々の稽古を重ねてもメエリーの歌は全然生彩鳴く、初日も危ぶまれた。鉛の様な重い心に重い足取りで舞台に出たメエリーは眼の前のプロンプター・ボックスのなかにモンテヴェルディの顔を見出して夢かと驚喜した。彼女の「お蝶婦人」は初演が素晴らしい大成功であったことはいうまでもなかろう。

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