「女として父を見ていた娘」エル・スール かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
女として父を見ていた娘
10代の頃見たが、どんな映画だったか思い出せない。
父と娘のハナシだった、気の良いおばちゃんが出てきた、思い出すのはそれくらい。
なので、今回再見しました
画面が光と影のコントラストを強調した絵画のようで美しい
薄暗いスペインの風景、室内の佇まいがこころよく落ち着きます。
大きな窓に隔てられた外は雪だが、母と二人で過ごす居間のテーブルの、温かくここちよさそうなこと。
ファザコンは間違いないですが、エストレーリャが父を見る目が「娘」というより「女」の目線のようで、私には気持ち悪かった。
自慢の父が本当に愛していたのは自分ではなく、「イレーネ・リオス」。
その事実と、父が親ではあるが「男」であることを思い知らされた思春期の少女のショックはいかばかりかと思う。
ピカソが「ゲルニカ」を表したように、スペインの内線は惨く過酷で、肉親や親しい人たちもそれぞれ敵味方に分かれて争う悲惨なものだったらしい。
父は内戦で心裂かれてしまったようで、妻にも娘にも癒やされることが無かったようだ。
妻や娘に対してすら他人行儀で心を開かず、無理難題は言わないが相手を思いやることもない。自分以外はすべて「他人」のようで異様な感じがした。
孤独に耐えかねてそういう自分を変えたかった、遅まきながら娘と触れ合おうとしたのかもだが、娘にしたら今更そう言われてもね、という反応は、まったくごもっとも。
父は孤独に絶望したのでしょう
それでも、娘に残すであろう傷のことは考えなかったのか、と思う。
これでは娘は自分のせい、と思って後悔するし自分を責め続けるだろう。
病気になってしまうのも当然だ。
やはり彼には妻も娘も他人でしかなかったと思う。いくら娘に拒絶されたにせよ。
夫には別に意中の人がおり、慈しんで育てた娘には「自分を世話してくれるヒト」程度にしか認識されず、さらにあんな形で夫と死別の後、娘は夫の故郷に行く
お母さん、気の毒すぎ。
長いこと「イレーネ・リオス」という名前が時々浮かんできて、誰だったか思い出せなかったが、この映画からだった、というのが一番の発見でした
映画の内容を思い出せなかったのはきっと、当時の私が寝てしまってほとんど見てなかったんだろうと推測
個人的にミステリー映画になっていました
そして今回も睡魔との戦いだったわ
蛇足ですが、エストレーリャの幼少期を演じた子役が、「大草原の小さな家」のローラに、少し似ていた、と思いました。