狂へる天才
解説
マーティン・ブラウンの筆になるストオリイから「民衆の敵」のハーヴェイ・シュウと「悪魔スヴェンガリ」のJ・グラブ・アレキサンダーが協力して脚色し、「氷原の彼方」「大地の果てまで」のマイケル・カーティズが監督したもので主演者は「悪魔スヴェンガリ」「海の巨人(1930)」のジョン・バリモア。助演者は「民衆の敵」「夜霧の女」のドナルド・クック、「悪魔スヴェンガリ」のマリアン・マーシュ、カーメル・マイアース、チャールズ・バターウォース、ルイ・アルバーニ、フランキー・ダーロ等々で撮影は「悪魔スヴェンガリ」と同じくバーニー・マッギルの担任である。
1931年製作/アメリカ
原題または英題:The Mad Genius
ストーリー
ロシア皇室舞踊団の主席スターを母にイヴァン大公を父に持ったツァラコフは生まれながら足が不自由であったが母より享けた舞踊の天才は不自由な身体に勃々としてみなぎっていた。操り人形の一座を率いて田舎を旅興行しては僅かに慰めていたのであったが、ある時フェドルという少年が無知な養父に虐待されているのを発見し、少年の体質が驚くべきほど舞踊に適しているのを見て養うこととする。ツァコラフは自分の胸の燃える天才的情熱を少年に注ぎ込むのであったが15年の後にフェドールは一流の舞踊家になった。ツァラコフの天才はフェドールという肉体を得て彼の永年の夢想が舞台の上に躍動するようになったのである。彼は一種の怖るべき力を持っていて、その力によって大勢を人形のように操ることが出来た。ツァラコフ一座は一流の舞踊団として欧州に鳴らした。舞台監督にはサージという名手がいたし、秘書にはカリムスキーという馬鹿に近いほどの忠実漢がいたし、フェドールの相手役にはナナという窈窕たる美女がいたし、レノー伯爵という富豪の後援者がいたし、蓋しツァラコフは満足し切っていた。ところがフェドールがナナを愛するようになったのでツァラコフはそれが舞台の成績に障ることを気遣い巧みに計画してナナを解雇しようとするが、フェドールがそれを見抜いて憤慨し、二人は脱退してパリへ赴く。フェドールは一流の劇場と契約を結ぶが、その後8年間の契約をツァラコフと交していたので、その抗議は到るところにフェドールを妨げ、ついにフェドールはモンマルトルの怪しげな酒場に踊ってナナと二人の衣食をすごすようになってしまう。その頃ツァラコフ一座は花々しくパリで興行することになる。ナナがフェドールの帰参をツァラコフに懇願しに行くと彼は言語に絶した功弁を弄し、フェドールのためを思うなら別れるに然くはないとナナに信じさせる。それでナナは書き置きすら残さずに昔から言い寄っていたレノー伯爵に伴われてベルリンに行ってしまう。一方ツァラコフは弁舌を振るってフェドールを説き、再び一座に加入させる。しかしレノー伯爵の親切を感じるたびにナナにはフェドールのことが思い出され彼女は日増しに憂欝を加えてゆく。伯爵は彼女の真情を察して折からベルリンに来ていたツァラコフ一座の初日を見物に行く。そして客席のナナと舞台のフェドールの眼がついに合ってしまう。フェドールは彼女の変わらぬ愛を一瞬に悟り、大いにツァラコフを責めるが、彼は例の「力」を発揮して最後の幕に出演するように説き伏せる。次は大きな「偶像」を中心に踊る一幕であったが舞台監督のサージは麻酔剤の乱用の結果半ば発狂していたので以前からその「偶像」か生きていないと言って不服を言っていたのが突然斧を振ってそれを毀し始める。ツァラコフはとめるために舞台裏に急行する。舞台が開いて間もなく客席から只ならぬ叫声が起こる。舞台の正面の偶像の上から血にまみれたツァラコフの死体が転げ落ちるので劇場は一大混乱を起こしてしまう。怪しい支配者が死んで、ようやく解放されたフェドールとナナは永遠に別れじと相抱くのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マイケル・カーティス
- 脚色
- ハーヴェイ・シュウ
- J・グラッブ・アレクサンダー
- 原作
- マーティン・ブラウン
- 撮影
- バーニー・マクギル