「コングと美女の愛のドラマはここから始まった」キングコング(1976) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
コングと美女の愛のドラマはここから始まった
怪獣映画の古典を43年ぶりにリメイク。
プロデューサーにディノ・デ・ラウレンティス、監督に『タワーリング・インフェルノ』を大ヒットさせたジョン・ギラーミン。その他、大物スタッフ。
巨額の予算を投じ、自信と期待のほどが窺える。
1976年と言えばSFX技術も発達し、『スター・ウォーズ』などでSFブームの直前。
そんな時代に、“王者”コングは…?
初めて見たキングコングは『キングコング対ゴジラ』だったと思うが、原型コングは本作。オリジナルより先に見た。
しかしTV地上波の録画で、大部分カットされている上に吹き替え。何だか非常にチープに感じたのを覚えている。
実際作品は興行的には大ヒットしたが、批評や見た人の感想は賛否。
自分も初見以降何度か見て、また久し振りに見て、良かった点や不満点混雑。
以下、挙げると…
時代設定が1930年代から1970年代に。1970年代の雰囲気も悪くないが、1930年代のまだ世界が謎と神秘に包まれていた雰囲気は薄れた。
島への冒険は映画撮影ではなく、油田採掘。現代的と言えば現代的だが…。
よって、キャラも設定変更。デナムに当たるフレッドは石油採掘のリーダー、ジャックは同名だが旅に同行する生物学者、アンもドワンとなり、街中スカウトではなく海を漂流していた所を助けられる。
ここら辺は別物だが、島に到着~コング出現~アンもといドワン連れ去られ…は概ね踏襲。
救出の為、太古の恐竜が生き残っている島を行く筈が、見せ場の一つなのに、今回恐竜は登場せず。当然恐竜とのバトルはなく、唯一大蛇と闘うだけ。も、物足りん…。ピージャクも本作を見た時落胆したという。
もっと現実味ある世界観を目指したのだろうが、秘境アドベンチャーとしてのワクワクが失われちゃ…。
クライマックス、エンパイア・ステート・ビルではなく世界貿易センタービルに変更になったのも最大の議論点。しかし今見れば、在りし日の世界貿易センタービルの勇姿に感慨深いものが…。
ストップモーションアニメではなく、日本の特撮のような着ぐるみ&ミニチュアに。
これも賛否分かれる所。ウィリス・オブライエンのストップモーションアニメ演出が良かった…との声多し。
コングのスーツデザインにまだ若手だったリック・ベイカーも携わり、スーツアクターも担当。さすが『2001年宇宙の旅』の猿に多大な影響を受けたハリウッドきっての猿マニア!
が、本作のコングのデザインを見て非常に失望したというが、それでもなかなか表情の変化やベイカーの目の演技は見もの。
着ぐるみやミニチュアは日本のお家芸。が、この頃の日本特撮と言えば…。前年に昭和ゴジラシリーズは一旦終了し、他の特撮も低予算&子供向け。
それに比べれば、予算の違いもあるが、大掛かりで非常によく作り込んでいる。
衰退した着ぐるみ&ミニチュア特撮の醍醐味を、ハリウッドがたっぷりと。日本よ、悔しがらないとダメだ。日本特撮が息を吹き返すのはまだ少し先の事。
賛否多いが、だがしっかりと肯定したい…いや、褒め称えたい点がある。
コングとヒロインの交流。
オリジナルではアンはキャーキャー悲鳴ばかり上げ、何だかコングが不憫に感じた。
本作でも勿論最初は戦くが、次第にコングへ情が移る。
輸送船内で暴れるコングをなだめたり、特筆すべきはクライマックス。
世界貿易センタービル天辺にて、戦闘機が迫り来る。コングは愛するドワンに危害が及ばないよう、彼女を離す。
ドワンは懇願。私を離しちゃダメ! 殺されるわ!
何かと賛否多いリメイクコングだが、このシーンだけは特別。胸打ったなぁ…。
ジャックもコング擁護派。オリジナルでは恐れられていたコングだが、味方が増えた。
そのドワン役に、本作で映画デビューとなったジェシカ・ラング。
今や2度のオスカーに輝く名女優だが、この時は演技を酷評され、“キングコングの恋人”と暫く揶揄され…。オリジナルのフェイ・レイも似たような事あったんだろうなぁ…。
それがバネとなり、本作の後演技のレッスンに励み、名実と共に実力派へ。
本人にとっては思い出したくない役だろうが、初々しさ、セクシーさ、キュートさ、魅力たっぷり。あんな露出の高い格好で野郎どもしか居ない船の中を歩き回っちゃアブナイでっせ。
相手役のジェフ・ブリッジスも長髪髭面でワイルドセクシーな雰囲気。
その二人のロマンス。
初見時子供ながらに、アダルトな雰囲気と言うか、はっきりエロスを感じた。
ここが、このリメイク版のポイントだったりして…?
久し振りに見たら、そう悪くはなかったな。
オリジナルへ溢れんばかりのリスペクト。本作で描かれたコングと美女の愛のドラマ。それらを併せ、さらに深みをもたらしたのが、ピージャク版。
そうやってコングは愛され続けていく。
…次の“続編”を除いては。