「偉大なる雛形の発明」キング・コング(1933) 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
偉大なる雛形の発明
物語のプロットはいたってシンプルだ。映画の撮影隊が辺境の島で数多の巨大生物と出くわし、すったもんだの末に巨大なゴリラを見世物として本国に持ち込んだものの、途中で鎖が外れてNYじゅう大パニック、というもの。
この単純さと普遍性ゆえに本作は怪獣映画というジャンルにおける物語の一つの雛型を完全に確立したといえる。
思えば草創期からして既にひたすらショッキングなスペクタクルに終始するような暴力的欲望からは距離を置いて「人間の因業」というメタ的な系列を敷設していた怪獣映画というジャンルは、そのイメージに反して割と真面目で冷静沈着だ。『ゴジラ』がシリアスな反核メッセージを表象するための文法として怪獣映画を採択したのも頷ける。
歴史的なことはさておき映像もすごい。ストップモーションやクロマキー合成といった当時の新技術が随所に遺憾なく散りばめられており、なおかつ重力も感じられる。ネットもテレビもないような時代にこんなものを劇場の巨大な画面で観たら卒倒してもおかしくない。
にもかかわらず今本作を見てもそこまで面白いと感じられないのは、ハリウッドの映像技術史が今なお更新され続けていることの証左なのかもしれない。
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