語るな過去を
解説
セシル・B・デミルの大作品「何故妻を代へる」Why Change Your Wife?の原作者として有名なセイダ・コウアンの原作を、ハリー・ガースンが監督した人情劇で、主役は「若き人の眼」などのエキティー映画で紹介されたクララ・キンボール・ヤングである。クララの相手はJ・フランク・グレンドンとキャスリン・ウィリアムスとである。
1921年製作/アメリカ
原題または英題:Hush
ストーリー
ヴェラ・スタンフォードは今の夫ジャックと結婚する3年前にハーバート・ブルックスという浮気な男の甘言に乙女心を躍らせて、尊い彼女の誇りを捧げたのであったが、花から花を渡り歩く胡蝶にも似た彼の心持ちを知った時、彼女の夢は破られて、苦い涙を悔恨の袖に包んだのである。ヴェラとジャックが結婚して1個年の月日が経った。彼はヴェラの親友イサベル・デインおよび彼の親友ヒュー・グレアムの2人を招待し、4人はオーモンドの海浜へ来て楽しい休暇を味うことになった。彼らはここへ新婚旅行に来ているハーバートに会い、ヴェラはこの不意の再会に驚き怖れた。彼女の心は愛する夫に過去の一切を懺悔しようか、それとも昔の秘密は1人の胸に納めておこうかと思い惑うが、夫が假令2人の結婚する以前何事があったとしても彼の愛は変わらぬという誓いを立てるのを聞いて、かつてある男が彼女の生活に関係していたことを告白した。ジャックはこれを聞いた時、激しい打撃に打ちのめされたように悩み、彼女との間には深い溝が掘られてしまう。グレアムは慈善会を催した際、ヴェラにサロメに扮して活人書を演ずるように依頼する。始め彼女は断るが、夫の冷い仕打ちに反抗してこれを承諾する。ジャックはグレアムがヴェラの「ある男」であったと邪推し、一時ヴェラは彼と別れてイサベルの元へ身を寄せたが、ジャックも彼女を忘れられず、彼女もジャックを想っていた。イサベルの計いでグレアムがヴェラと何の交渉もなかったことをジャックは知る。ジャックはヴェラがすべてを告白しようとした時、彼女の唇を塞いで「私に何にも話してくれるな――」といって、変わらぬ愛を誓ったのである。まことやかつてある哲人は言った。『ある男が彼の恋人の相手の誰なりしかを知る時、彼が女を赦すことは難い。しかしその相手が誰だか分からなかった時、赦すことは可能であろう』と。