逢瀬いま一度
解説
「巨星ジーグフェルド」「米国の機密室」のウィリアム・パウエルが主演する映画で、ウイリー・フォルスト作品「たそがれの維納」の英語版である。ウォルター・ライシュの脚本を「ある夜の特ダネ」のハーマン・J・マンキウィッチが翻案脚色し、「巨星ジーグフェルド」「ある夜の特ダネ」のロバート・Z・レナードが監督し、「極地の青春」「青春の抗議」のアーネスト・ホーラーが撮影した。助演者は「巨星ジーグフェルド」のルイゼ・ライナー、「我家の誇り」「巨星ジーグフェルド」のフランク・モーガン、「歓楽の女王」「巨星ジーグフェルド」ヴァージニア・ブルース、「野生の叫び」のレジナルド・オーウェン、「ウィーンの再会」のヘンリートラヴァース、「黒騎士」「私と女王様」のマディー・クリスチャンス、「忘れじの歌」のローラ・ホープ・クルーズの面々である。なお、音楽は「桑港」と同じくカペーとユルマンが編曲している。
1935年製作/アメリカ
原題または英題:Escapade
ストーリー
1905年のウィーンの春、カーニバルの夜、外には雪が降っていたけれど舞踏会は賑やかであった。その夜の福引でチンチラはマフを当てたのは、宮廷音楽指揮者ポウル・ハラントの許嫁アニタである。同じこの会に来た当時1代の流行作家ハイデネックはその美貌と共に女出入りで噂の高い男であったが、かねてアニタとは浅からぬ縁がある。ところが彼は今夜は彼女を顧みず、ポウルの兄のハラント教授の若い妻ゲルタの姿に見とれ、今夜自分の画室に来いという。ゲルタは彼に魅せられ舞踏会を抜け出して彼のもとへ行ったところ、ハイデネックは彼女の面にマスクをかけ、腰にアニタから借りて来たマフを纏わせ裸体画を1気に書き上げた。事件というのはこれだけでだったが、この仮装舞踏会と題された絵が翌日雑誌の表紙に載ってウィーン中の評判になった。すると絵のモデルの持っていたチンチラのマフから醜聞を察したのはハラント教授で、人の許嫁としてあるまじき所業と弟に事件の処置を迫った。そこでポウルがハイデネックを訪れモデルの名を尋ねると、彼は困ってパウルの携えた楽譜から思いつき、ドゥーア嬢であると答えた。ところが奇なことには本当にこのドゥーア(長調)という名を持った娘が、このウィーンにいたのである。M侯爵夫人の小間使いをしているおとなしい娘である。そしてハイデネックはやがてドゥーアと相識ったが、この娘の清らかさはさしも悪魔に落ちた心をひきつけた。そして以後彼の画風すら一変して聖なる姿を描くようになったのである。だがそれからしばらくして今夜ウィーンでカールソーの初舞台が開かれるという日、M侯爵夫人は邸で催されたお茶の会で、ドゥーアはハイデネックに関するアニタの中傷を耳にした。ドゥーアの胸は傷ついたが、アニタはそれに飽きたらずして更にドゥーアを訪ねた。ハイデネックをピストルで撃った。憎い恋人とは思ったが、傷ついた身を見てはその心も失せ、ドゥーアはカールソーの歌うオペラに駆けつけハラント教授に手術を頼んだ。だが教授はふとした機会から、愛妻がモデルであることを知りハイデネックと絶交していたのだった。しかしドゥーアの切なる願いにより、教授は傷者を見に行った。傷はたいしたことはなかった。そして教授はアニタが狙撃した犯人であることを知り、万事を了解してすべてをひとり己の胸に納めた。温室の中ではドゥーアはハイデネックと相擁していたが、外では雪が未だ降っていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ロバート・Z・レオナード
- 脚本
- ウォルター・ライシュ
- 脚色
- ハーマン・J・マンキウィッツ
- 製作
- バーナード・H・ハイマン
- 撮影
- アーネスト・ホーラー
- 音楽
- ブロニスロー・ケイパー
- ユルマン
- ガス・カーン
- ハロルド・アダムソン