「【”善は悪から生まれる。”不器用だが清廉な理想を持つ田舎役人が州知事になり汚職、賄賂に手を染め自滅する様をシニカルに描いたポリティカル作品。権力者の周囲の人間の在り方を問う作品でもある。】」オール・ザ・キングスメン(1949) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”善は悪から生まれる。”不器用だが清廉な理想を持つ田舎役人が州知事になり汚職、賄賂に手を染め自滅する様をシニカルに描いたポリティカル作品。権力者の周囲の人間の在り方を問う作品でもある。】
■州の役人・ウイリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)は、不器用だが清廉な理想を持つ男。
そんな彼を、記者のジャック・バーデン(ジョン・アイアランド)は上司により、密着し記事にするように指示され、彼に近づく。
小学校の校舎建設にまつわる不正を非難したことでスタークは人々の注目を集める。後に崩落事故が起き多数の児童が亡くなったことで、彼はさらに人気を集め、州知事にまで上り詰める。
だが実直だったウイリーは、権力を手にした途端に次第に汚職や賄賂に手を染めるようになっていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・これは、幾人かの方も指摘しているが、今作のウイリーは田中角栄元首相にソックリである。大学の時に読んだ立花隆の分厚い「田中角栄研究」を思い出す。
・ウイリー・スタークが、最初は弁舌も下手くそな様から、取り巻きから酒を飲まされイキナリ饒舌に民衆の前で流暢に弁舌をするシーンは、象徴的である。
・周囲の人間はジャック・バーデンを始め、彼の婚約者アン(ジョーン・ドルー)も、変わっていくウイリー・スタークの姿に、戸惑いつつも彼の持つ権力に抗えない姿がナントもシニカルである。
序に言えば、ウイリー・スタークは役人だった頃は酒が弱いが、知事になってからは酒を手放さないのである。
・ウイリー・スタークの変貌ぶりに表立って嫌悪感を表し批判するのは、アンの兄アダムのみである。
残りの周囲の人間は、戸惑いつつも彼に態度を改める様に、進言しない傍観者なのである。
<そして、ウイリー・スタークは絶頂期に大勢が居る場でアダムに撃たれ、アダムも撃たれてしまうのである。
今作は、不器用だが清廉な理想を持つ田舎役人が州知事になり汚職、賄賂に手を染め自滅する様をシニカルに描いた作品であり、権力に抗えないウイリー・スタークの周囲の人間の姿も、考えさせられる作品である。>
■今作で、ウイリー・スタークが知事になってから酒を手放さない姿を見ると、ロッキード事件発覚の際に、田中角栄元首相が毎晩、一本!サントリーオールドを飲み干していて、顔が歪んでしまったという逸話を思い出した作品でもある。