「本物の“ガッツ“とは?」42 世界を変えた男 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
本物の“ガッツ“とは?
「法律に逆らえば、時に“称賛”される。
慣習に背けば、社会から排斥される。」
1945年春、ナチスドイツが降伏。
アメリカ国内では市民の暮らしも日常を取り戻しつつあり、戦地に赴いていた野球のスター選手たちも続々と復員していた。
この時、ブルックリン・ドジャース社長のブランチ・リッキーは、文字通り、“慣習に背こう”としていた。
その当時、メジャーリーグ16球団に登録されていた選手は400人。
400人すべてが白人だった。
そういう時代にリッキーは、黒人選手と契約しようとしていたのだ。
メジャーリーグ最初の黒人選手になるべく、白羽の矢を立てられたのは、黒人だけのリーグで活躍していたジャッキー・ロビンソンだった。
チームメート、相手チーム、ファン、周囲からの激しい反発が予想される中、リッキーはジャッキーにこう告げる。
「“やり返さない勇気”(ガッツ)を持つ選手になれ」
ジャッキーはこう答えた。
「もし僕にユニフォームをくれるなら、もし僕に背番号をくれるなら、勇気で応えます。」
1945年夏、ジャッキーはまずドジャース傘下の3Aチーム、モントリオール・ロイヤルズと契約する。
そして、早速キャンプ中から(今では考えられないような)嫌がらせ、反発、脅迫の洗礼を受ける。
映画では、リッキーが黒人選手との契約を周囲に宣言する1945年から、ジャッキーがメジャーリーグデビューを果たす1947年のシーズンが描かれる。
エピソードの数々は事実に基づいて描かれているが、これはほんの一部に過ぎず、間違いなく、ここに描かれた以上の嫌がらせ、反発、脅迫があったに違いない。
それに対し、リッキーは全面的にジャッキーをバックアップした。
そして、ジャッキーは“やり返さないガッツ”を持って全力で耐えた。
現在のメジャーリーグは黒人選手の存在なしでは成立しない。
しかし、今から70年前のブランチ・リッキーの”慣習に背くガッツ”が、ジャッキー・ロビンソンの“やり返さないガッツ”を生み、それがチームメイト、相手チーム、ファン、やがては社会を変える大きな一歩になった。
その道筋が、ジャッキーに続いた黒人選手、中南米出身選手、そして現在の日本人メジャーリーガーの活躍に繋がっている。
「野球は民主主義の確かな証しであり、ボックススコアはその象徴だ。」
冒頭のナレーションに、こんな一節があるが、私が熱心な野球ファンでもないのに、グランドに選手が散らばり、ウォーミングアップのキャッチボールを始めるのを見るだけで、なんとなく胸が一杯になり、幸せな気持ちになるのは、やはり野球が、野球が出来ること、野球観戦が出来ることが、平和の象徴だからだと思う。
ジャッキーが本拠地エベッツ・フィールドでメジャーデビューを飾った“その日”。
開催される試合に出場する選手すべてが“背番号42”をつけてプレーする。
今年も“その日”、
4月15日がもうすぐやって来る。