劇場公開日 2012年9月1日

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カルロス : 映画評論・批評

2012年8月28日更新

2012年9月1日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー

カルロスの物語はこの映画を観る私たちの物語へと変容する

本作の主人公、70年代に世界を騒がせた実在のテロリスト、カルロスとはいったい何者か? 5時間30分という時間をかけてこの映画が語るのは、カルロスという男の運動を通して見えてくる世界の姿でもある。具体的な当時の世界情勢はもちろん、そのような世界にならざるを得なかった「政治」というシステムの見取り図のようなものも浮かび上がる。世界中に張り巡らされた情報の網目をカルロスが飛び交う。この映画の中でカルロスは何度飛行機に乗ったことだろう。

ヨーロッパからアフリカ、中東、東欧、もちろんヨーロッパ内をも何度も行き来して、そのたびに彼の姿が変貌していく。小さな変化が大きな変化を呼び、大きな変化が小さな変化を際立たせる。現実にあった(つまり過去の)出来事であるにもかかわらず、それは現在の出来事のようでもありこれから起こる出来事のようにも見えてくる。

おそらくその飛行機は、距離を踏破するだけではなく超えられない時間の壁をも超えて、過去や未来へと行き来しているのだろう。いや、そうでなければこの映画を作る意味はないと、監督は思っているに違いない。70年代から80年代にかけての物語は、そのまま21世紀の物語へと飛躍する。カルロスの物語はこの映画を観る私たちの物語へと変容する。そんな瞬発力が5時間30分を支える。観終わった時には「私もカルロスだ」と、誰もがそんなことも言ってみたくなるはずだ。

樋口泰人

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