「人生が交錯する面会室」愛について、ある土曜日の面会室 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
人生が交錯する面会室
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私がまだもっと繊細で不安定だった頃、周囲の見ず知らずの人々にもそれぞれ人生があり生活があることにふと気付いて何だかたまらなくなってそのまま電車に乗っていることが出来ずに降りてしまったことがある。大勢の人間が集まる場所では避けようもないことで、実際に電車に乗り合わせた誰かの人生や生活について私が知ることはない。しかし、それぞれに人生や生活があることは紛れもない真実。
これが長編デビューだというレア・フェネールが描く三人(三組)の人生も、刑務所の面会室という多くの見知らぬ人々が偶然居合わせる場所で交錯する。
刑務所の面会室という場所を考えれば、そこに居合わせた人々のそれまでの人生は喜びよりも哀しみ、苦しみ、困難がより多かったことは容易に想像出来る。
息子が何故殺されたのかを知るために犯人に会いに来たアルジェリア人女性。恋人に妊娠ともう会えないと伝えるために来た少女、大金と引き換えに自分とそっくりの服役者と入れ替わろうとする男。
服役者と面会者の間のすれ違う思いと衝突。
アルジェリア人女性はまた息子の恋人であり命を奪った男に再び会いに来るのか?少女はこどもを産むのか?そして入れ替わった男は約束通り一年で釈放されるのか?
面会室の外の曇り空のように、彼等の未来に何が待っているのかは分からない。
しかし、人生は続く。
映画を観終わって窓の外を見ると、ラストシーンと同じような雲が広がり、その雲の隙間から少しだけ陽がさしていた。
そんなシンクロもなんだかやけに心に沁みた。
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