「ドラマが0。」永遠の0 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマが0。
まず上映時間が144分もあることに仰天した。長いっ!
原作は未読、タイトルは知っていたけど内容は殆ど知らず…
監督があの山崎貴となっていたので、さてはVFXオタクの
本領を発揮するんだな?と思っていたら、本当にそうだった。
上映時間=VFX時間、戦闘シーンはかなりのリアル感。
戦闘機マニアには見所がたくさんあったのではないか、私も
映像面では(長い長いと思いながら)ココだな、と思っていた。
ドラマの方は、祖母の葬儀で現祖父が実祖父でないことを
知った青年が、姉と共に実祖父の人物像の謎に迫っていく物語。
様々な生き残り老員に話を聞いても、いい噂は聞こえてこない。
戦死を恐れる臆病者との烙印を押されていた祖父。
祖父とはどんな人物だったのか。青年はのめり込んでいくが…
過去を演じるのが岡田准一と井上真央の夫婦で、そこに生まれた
娘が現代での風吹ジュンということになる。ということは、
井上真央が再婚した人が、現代では夏八木勲が演じている祖父。
さほど分かり辛い構成ではないが、行き来する物語の編成都合上、
これが誰で、あれはこの人、と場面を確認しながらの鑑賞となる。
登場人物が多いので(ほぼインタビューの一回登場になるが)
せっかく名優陣を取り揃えているものの、登場場面が異様に短い。
何で144分もあって、せっかくのドラマがこんなに説明不足なのか
勿体ない作りで、感情移入する時間がないドラマになっている。
若手から見た戦争と、リアルを味わった人間との落差がまるで
学芸会の舞台劇のように(ドリフ調の)繰り返し回転で演じられる。
VFXはリアルでも、感情のリアルが描かれていないことが残念。
とはいえ、若手以外の老優たちは少しの出演時間に印象を残し、
ラストの場面カットでも「あぁこの人は…」という記憶に繋げる。
若手では祖父から襷を掛けられた、染谷将太の大石が出色。
彼がその後の誰にあたるか。ということは置いといて、
なぜ彼だったのか…?という真相の解明や、
松乃とのエピソードが後半で活きてくる。遺された妻子のその後。
戦場でどれほどの夫や父親や息子が奪われ、焼け野原に遺された
家族は、その後をどう生き抜いていったか。144分の最後の最後に
「生きる」ことの意味と、宮部が一番恐れていたものの正体が分かる。
やーっと、ここまできたか!!と、遅まきながら、そこで共感。
しかし思ったのは、
なぜこんなエピソードを今まで祖父や祖母はひた隠しにしたのか。
せめて娘にくらいは話しても良かったんじゃないか。
もし祖母に続いて祖父も亡くなってたら、この件はどうなったんだ。
現代の若者に対するアプローチはもっと早くに為されていいはず。
映画として命の尊さを解説するためには、
まずは臆病者の行から入って、VFXを駆使することが必要だった。
そういうことでしょうかね、監督。
だけどそこまでリアルに徹するのなら、残虐な命の終末を描くことも
必要なのでは。キレイなまま宮部久蔵が死んでゆくのはどうかと…。
(テロと特攻の討論は興味深いけど、今の学生さんは知ってると思うよ)