「VFX映像は嬉しかったが、戦争の本質から目を背けて、泣かせよう泣かせようとするあざとさが印象に残った」永遠の0 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
VFX映像は嬉しかったが、戦争の本質から目を背けて、泣かせよう泣かせようとするあざとさが印象に残った
山崎貴 監督による2013年製作(144分/G)の日本映画。配給:東宝、劇場公開日:2013年12月21日。
原作は未読である。
零式艦上戦闘機(零戦)が空母に着陸する等、空母や戦闘機のリアリティはかなり良くて、VFX映像にはとても感心させられた。
ただ、祖父の物語を探る三浦春馬絡みの物語が陳腐で、彼の演技も拙いと思ってしまった。尊敬する人間の孫というだけで、大物たちがあれだけの親しみを示すのは奇異であるし、祖父が臆病者でないということであれ程の喜びを感ずるのも血縁主義すぎて、かなり異常と思ってしまった。特攻隊員を自爆テロリストと同一にされて激しく怒っていたが、それ程大差はない様に自分にも思えてしまう。自爆テロと違って、特攻は殆ど強制の様には描かれていたが。
妻と娘を思って絶対生きて帰るという信念でずっと生きていた岡田准一が、特攻を選んだ理由が結局良く分からなかった。教え子が次々と無駄死にしていくことで精神が壊れてしまったという描き方であったが、だとすると故障を見抜き、それを若い有望そうな教え子に譲るという冷静に思える行動と矛盾する様に思えてしまった。命をかけた航空機チェンジということで、無理矢理に感動を呼ぼうとしている設定と思えてしまった。
岡田准一が妻の井上真央に、絶対に帰ってくる、死んでも帰ってくると告げて、身代わりに生き残った教え子染谷奨太が井上のところに来て、やがて相思相愛になる。コレ外形的には未亡人が終戦後早速に男を連れ込んだということで、夫が約束を守ったと純愛で綺麗事で語らせることに、随分と気持ちが悪いあざといストーリーと思ってしまった。
岡田の凄腕に血を激らせ戦闘機で戦闘を仕掛けてしまう新井浩文(後の事件で映画界から追放されてしまった?)、後のヤクザ親分となった田中泯の演技は,存在感が有ってかなり良かったし、岡田の教官としての立派さを語っていた橋爪功も上手い演技だったので、ストーリーのあざとさが残念に思えた。
結局、原作がそもそも悪いのかもしれないが、反戦風でありながら、零戦の性能、凄腕零戦パイロット、そして特攻隊員を讃えてしまっていて、戦争の悪質的な本質(例えば、前途ある日本の若者を死に追いやる特攻隊を自分たちの保身のために作った組織人)から眼をそらさせる、とてもマズイ構成の映画に自分は思えてしまった。
監督山崎貴、原作百田尚樹、脚本山崎貴 、林民夫、製作市川南 、畠中達郎、共同製作原田知明 、石川豊 、加太孝明 、島村達雄 、阿部秀司 、藤島ジュリーK. 、岡聡 、入江祥雄 、戸塚源久 、町田智子 、長谷部剛 、高橋誠 、冨木田道臣 、吉川英作 、宮本直人 、佐々木崇夫 、山下利一郎、エグゼクティブプロデューサー上田太地 、遠藤日登思 、阿部秀司 、安藤親広、プロデューサー遠藤学 、筒井竜平 、守屋圭一郎、撮影柴崎幸三、照明上田なりゆき、美術上條安里、録音藤本賢一、装飾龍田哲児、編集宮島竜治、VFX山崎貴、VFXディレクター
渋谷紀世子、音響効果岡瀬晶彦、音楽佐藤直紀、主題歌サザンオールスターズ、プレビズアドバイザー栃林秀、戦時考証神立尚紀、軍事指導東裕一、零戦製作監修大澤克俊、キャスティング緒方慶子、スクリプター甲斐哲子、助監督山本透、制作担当阿部豪、ラインプロデューサー山下秀治、プロダクション統括山内章弘 、佐藤毅。
出演
岡田准一宮部久蔵、三浦春馬佐伯健太郎、井上真央松乃、濱田岳井崎(戦時中)、新井浩文景浦(戦時中)、染谷将太大石、三浦貴大武田(戦時中)、上田竜也小山、吹石一恵佐伯慶子、田中泯景浦(現代)、山本學武田(現代)、風吹ジュン清子、平幹二朗長谷川、橋爪功井崎(現代)、夏八木勲賢一郎、佐々木一平山田、青木健伊藤、遠藤雄弥香川、栩原楽人寺西、古川雄輝。