「信念を「風」を読む努力で裏打ちする生き方」永遠の0 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
信念を「風」を読む努力で裏打ちする生き方
勤めを果たすことは、「日本」に貢献することであり、それは「戦勝」に貢献することであり、命を大切な人の命や次世代を守る為に使う事。「生きる」事への執着に結局は繋がる。
そこまで読めていた男が、戦時中教育ゆえ余りに少なく、作中の宮部小隊佐も、先を読む力があったからこそ異端扱いされてしまう。
作品を通し、「生きる事」にこだわっていたはずがなぜ特攻に志願したのかという疑問が残る者もいるようだが。始めは命を徹して守らなければならないものが、残してきた妻子のみだったが、教官の立場になると、自身よりもっと若い学徒の教え子達の存在も、守らなければならない意識に含まれるようになった。
しかし、教え子達まで特攻で母艦に辿り着きもしないのに無駄死にさせられる事態を目の当たりにする中で、教官として使命が変わってきた。
犠牲になった教え子達の手前、これ以上、できるだけ乱戦から脱線し帰還する過ごし方はできず、「必ず母艦に辿り着き成果を少しでもあげる」前提のもと、家族を守りたい気持ちは最期までありながらなんとか特攻に覚悟を決めて、志願したのだろう。
自分の命も誰かの命も大切にする、信念が一貫している。
家族を守るためには自身が死なないこと。
そのためには肉体や自機や戦況や敵国機や敵国母艦を、鍛錬を欠かさず調べておくこと。
関わる者を守るために、命を守れと伝えること。
実際の冨安中尉が弾丸を避け抜いて唯一母艦に突撃できただけでなく、母艦の弱点であるエレベーターホールに突撃しダメージを与えている事からも、生き残れたのは、臆病だからや飛ぶのが上手いからではなく、使命を果たすために真剣に考え悩み分析して取り組んでいたからこそ。勉強していたからだとわかる。
誰も特攻を名誉だとか本心では思っていなかっただろう。
生きたくて、死にたくなくて、堪らなかったが、口に出す事すら許されなかっただろう。
でも、どうせ命を捧げるのなら、その命を少しでも誰かの命を守るために、日本のために使いたいと、どうすればよいか考え行動し、そのためだけに過ごし続けた時、宮部小隊佐のような生き方になるのだと思った。
作中の岡田准一の大部分は精悍で、本質がわかっている者、「風」を読めている者、信念を貫く者、自分本位でなく命を守り国のために生きたい利他的な人間なのだと、表情や佇まい全てから伝わってくる。
だからより一層、特攻へと覚悟を決めるまでの、多くの教え子が先に命を落とす中で、憔悴し葛藤し狼狽して精神的に揺れ動き困っている様子が印象に残った。
どうすればいいんだ?と悩み抜いた時、自分にできることとして、敵母艦に必ずダメージを与えることとなったのだろう。
戦況を読み、文字通り風の方向を読み弾撃を交わし、生きる者に命を託す覚悟を決めるまで、生き抜いた裏で、真剣に生きているからこそ、どんなに死が怖かっただろう。
人の命はあっけない。
一瞬で物理的に失われてしまう。
それにより、背景にある家族の人生や紡いできた命の物語や何もかもも失われてしまう。
わかっているからこそ、生きることにこだわる。
それの何がいけないのかと大っぴらに言える現代の平和が少しでも広く、永く、続くよう、生きなければならない。
健康に留意し、家族を守って。
生きている時間を、有効に使って。