「鑑賞中は翻弄され、鑑賞後に深く考えさせられるが。」コズモポリス Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
鑑賞中は翻弄され、鑑賞後に深く考えさせられるが。
作品の良し悪しが分からない程に翻弄されました。
素直な感想として中盤まで意味不明で非常に退屈。
作品内では法則を見出そうとする論理性と抑えきれない生臭い性衝動が交互に描かれ、訳が分からない。
そもそも主人公の行動原理が意味不明。
しかし或る出来事を切欠に意味の分からない上に展開も読めなくなり。
何が起こるか分からないが何か不吉なことが起きる予感ばかりが想起され緊張状態を強いられます。
映像のショックに耐えられるよう右手に力を入れ続けた結果、短時間で筋肉痛になる程。
そしてラスト。
…え!?という場面を経て脱力感と一種の失望感。
何かモヤモヤしたものばかりが残りました。
ただ鑑賞後に思い返してみると色々と考えが広がり新たな発見が。
作中の殆どが特殊改造されたリムジンの中での会話が続く本作。
主人公が車の中に人を招き、会話をし、行為をする。
彼が車を出るのは食事、性行為、髪を切る時のみ。
まるで車は彼を守り外界から隔離する過保護な母親のよう。
巨万の富を得て世界をコントロールしている一方で、外界を知らず幼児性が未だ残っている。
幾多の大人を出し抜き成功を収めているはずの主人公が、才能に溢れているものの乳離れが出来ていない未熟な人間に見えてくる。
そんな彼が車を離れる時、そして車の外にいる人間をどう捉えているかという見方も面白い。
また、本作では「非対称」もテーマに。
金融相場から法則性を見出し成功を収めた主人公。
しかし過去の成功に囚われたが故に相場の突発的な動きを見誤り破滅へ向かっていく。
彼自身が抱える非対称。
他人から与えられる非対称。
そこに意味を見出そうとするが故に混乱する。
混乱が不安に繋がり、不安をぶつける相手を渇望し性衝動に繋がる。
作中の非対称なモノを見つけ追っていくという見方も面白いと思います。
その他色々な見方があるかと。
イノベーションのジレンマを描いた作品、欲望を突き詰めた結果の空しさを描いた作品にも感じられます。
しかし、これらの思考、私の浅はかな邪推を作中では「意味なんて無いんだ」と突き放してきます。
無理矢理にでも意味を見出し、理解したと安心したい私の横っ面を引っ叩いてくる。
そこで振り出しに。
この作品、この109分は何だったんだと。
正直オススメし難い本作。
私が観た回も何人かが途中退席。
が、映画を観て右腕が筋肉痛になった作品は近年有りませんでした。
何かモヤモヤしたモノを得たい方。
オススメです。