「ギリギリのカウントダウンになっていて、緊迫感をより強く演出していることが特色」ホワイトハウス・ダウン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ギリギリのカウントダウンになっていて、緊迫感をより強く演出していることが特色
パニックアクションの作品として、2時間たっぷり楽しめました。さすがはエメリッヒ監督です。2ヶ月前に後悔された『エンド・オブ・ホワイトハウス』がほぼ同じ設定のストーリーだっただけに、二つの作品を比べながら見てみるのも楽しいかと思います。
『エンド』に比べて、本作では後述するとおり本作は、米軍機によってホワイトハウスが破壊されるという、ギリギリのカウントダウンになっていて、緊迫感をより強く演出していることが特色です。また、どうしてホワイトハウスが占拠されたのか、その過程の説明として、『エンド』はどこか中東風の国のテロリスト軍団としたため、ホントにそう簡単には外国人にホワイトハウスが占拠できるのか、嘘くさいなという感じが否めませんでした。
ところが本作では、ホワイトハウス官邸内部に黒幕がいて、中東の軍縮に反対する産軍共同体と結託して、大統領の抹殺と中東地区の核攻撃を目指すという設定。内部が黒幕にいるとしたら、こちらの方が断然ありえるぞと思えました。しかも、強引に大統領を黒幕に仕立てていくテレビドラマ『24』よりも、犯行動機や実行部隊の傭兵を指揮する現場の人間の設定など、いかにリアルに見せるか、かなりシナリオが練り込まれていて、破綻がないのですね。
さらに本作のヒーローは主人公だけでなく、その娘の大活躍は特筆ものです。テロの解決に、本作のような子供が大きな活躍を見せるストーリーは今までになかったのではないでしょうか。意外性もあって、ラストで娘が大統旗を掲げる姿には拍手喝采をしたくなるほど高揚感に包まれました。
ところでパニック映画の大御所であるエメリッヒ監督作品なだけに、軍用ヘリが打ち落とされるシーンや、建物が爆破されるシーン、そしてホワイトハウスの庭園内部で繰り広げられる激しいカーチェイスシーンなど、迫力あるシーンが満載です。
また本作は、監督自身のこれ迄の作品の設定が何気ないところで設定されていて、過去に『インデペンデンス・デイ』が起こっていて、ホワイトハウス内にその記念のモニュメントがあることになっています。またちゃっかり『エアフォース・ワン』でハリソン・フォードがテロリストを足で蹴飛ばすシーンの台詞を拝借するシーンなど、茶目っ気たっぷりに遊んでいる場面もありますから、ぜひ捜してみて下さい。
物語の主人公はジョン・ケイルは、転職を繰り返し、やっとの思いで議会警察官の職を掴んだ苦労人。ホワイトハウスマニアの娘エミリーに、父親としていいところ見せようとシークレットサービスを目指すも、不採用となってしまいます。主人公が離婚しているというのももはや定番の設定ですね。
不採用だったことで幼い娘を悲しませたくないと、気晴らしも兼ねて彼女を連れてホワイトハウスの見学ツアーに参加します。それが運の尽きで、謎のテロリスト集団によるホワイトハウス占拠に巻き込まれてしまうのです。
テロリスト集団に捕まってしまったエミリーを奪還しようと、単身強敵のテロリストと化した強面の傭兵たちに立ち向かっていくジョン。娘のためにはどんな犠牲を厭わないという姿勢に、強い父親を感じさせて、感動的でした。
一方、ソイヤー大統領は、テロ発生時に安全な地下壕に避難して、事なきを得るはずでした。。しかし議会警察隊のステンツの裏切りにあって、警護の部隊は全滅します。ステンツり裏切りは、どうもこのテロは政権内部の陰謀で、黒幕の存在を臭わすものとなりました。ピンチのソイヤーを救くうのが、ジョン。このあと二人はホワイトハウスを駆け巡り、脱出の方策を探ります。お飾りとして登場する大統領役が多い中で、ジェイミー・フォックスが演じるソイヤーは、バトルにも参加したり大活躍。それと同時に、エミリーがピンチに落ち居たときは、自ら名乗り出るなど、凄く情と正義感溢れる魅力的な大統領でした。(彼の説く中東からの撤退が、和平のいしづえになるとは思えませんが(^^ゞ)
二人の逃避行は、ホワイトハウスの都市伝説として囁かれた秘密の抜け道にも立ち寄るので、なかなか興味深かったです。
やっとの思いで外に出ても、頑丈な門塀が行く手を塞ぎしかも、傭兵部隊の持参したロケットランチャーが外で待機している戦車すら近づけないという絶体絶命の状況でした。2時間たっぷり、簡単には救出できない状況を用意したのは見事なお手並みと思います。
さて、ラストが近づいて、気になってくるのは誰がこのテロの黒幕なのかということです。『24』を見すぎている人なら副大統領が怪しいということになります。しかし、副大統領搭乗していたエアフォースワンはあっさり打ち落とされてしまいます。
では、一体誰がと終わっているうちにテロは解決してしまい一件落着となるのです。しかし、ここで終わらないのがハリウッド映画のサービス精神。最後の最後になって明らかになる事件の真相には、あっと驚くこと請け合いです。
演技面ではジェイミー・フォックスが良かったですね。オバマを感じさせるインテリジェンスな感じをよく出していて、芸幅の広さを感じさせました。