「純粋な想いとファンタジーのケミストリー」ねらわれた学園 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
純粋な想いとファンタジーのケミストリー
何度も映像化されてきた名作ジュブナイルSF小説、初の劇場アニメ。
未来人による学園支配という設定は残しつつ、現代的な解釈で、より思春期の少年少女の淡い恋愛模様に比重を置いた作品になっている。
平凡な中学生ケンジ、彼の幼馴染みで活発なナツキ、ナツキの友人で優等生美少女カホリ、そして不思議な魅力の転校生・京極。
ナツキは幼い頃からケンジが好き。ケンジはカホリに密かに想いを寄せている。カホリは京極に心惹かれる。
それぞれの想いは一方通行。なかなか伝わらない。
今の世、携帯やインターネットで気軽にコミュニケーションが取れる時代。
だけど、それらで伝えきれるものではない。相手を想う心や伝えたい本当の気持ちは。
純粋な想いが、学園内で京極を中心とした不可思議な出来事に奇跡を起こす。
思春期の少年少女の淡く瑞々しい心情が、ファンタジックな作風に上手く溶け合っている。
さて、原作は名作ジュブナイルSF小説、80年代に映画化(しかもどちらも監督は大林宣彦)、そして現代的な解釈でアニメ映画化…と言うと、細田守監督の「時をかける少女」が思い浮かぶ。二番煎じと思われても仕方ない。
「時をかける少女」は爽快感溢れる青春物語で万人受けし易かったのに対し、本作はキャラクターデザインも作風も少女アニメ風で好き嫌いが分かれそう。
しかし、美しい映像の中で織り成す繊細な物語に共感せずにはいられない。
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