あの日 あの時 愛の記憶のレビュー・感想・評価
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愛とかそんな生易しいものではない
タイトルが感傷染みていて気になるが、中身はものすごくシンプルに、余計なものが削がれた力強い内容。
これは、見ている人の共感や同情を拒否する強い人生の物語かな。でも、見終わったときに漂う虚脱感は言い表せない。
嫁と姑、あの日の記憶。
実話を元に映画化された脱走悲恋劇。後に実話を辿るとほぼ完全に
この通りだった(後日譚は別)。運命は二人を完全に引き裂かなかった
訳だが、真の悲劇は過去を知らぬ家族の有様であり特に夫の決断は
妻を心底愛する故だと思うと簡単には靡けない情の積み重ねを感じる。
しかし嫁姑戦争があんな次元でも繰り返されていることには頭が痛い。
過去を捨てなければ生きている事が出来ない人生とは!
1944年のポーランドと言えば、第二次世界大戦もいよいよ終戦間近で激しい時期だろうが、しかし、事もあろうに、あのホロコースト・アウシュヴィッツ強制収容所で、捉えられていた若い男女が出会って、恋をして、結ばれ一緒に脱獄をするなんて!これが実話をベースに描かれているとは、にわかに信じられない話なのだが、しかしそれ故にとても、実話の重みが有り、観ていて圧倒され、観終わった後も中々席を立てないで、暫らく劇場の椅子に座った間まで固まっていました!
戦争当時強制収容所では、約250万人の人々がナチスによって殺害されたと言うが、この数字は当時の人口や、その後の人口などから推測された人数であり、本当の人数は今も正確には判別出来ないらしいが、ちなみに、広島の原爆で亡くなった人は13万人と言われ、その後の被爆した原爆病で亡くなっている人を含めると20万人と言われているが、およそその10倍は軽く上回る人数だ。
強制収容所で亡くなった方々のその内80%はユダヤ人であり、残りはジプシーや聖職者や、同性愛者や、ナチに抵抗する政治犯が収容所へと送られ、ガス室で殺害された。
或いは劣悪な環境下で餓えと伝染病により死亡したか、或いは銃殺だったと言われている。
この映画の2人は1944年に逃亡しているのだが、1945の1月には、もうポーランドにはソ連軍が侵攻して来ているので、強制収容所は閉鎖されてしまったのだ。
もう少し、待っていれば、晴れて解放されて助かっていたのだろうか?
しかし当時のハンナは、トマシュの子供を妊娠していたので、収容所の中に捉えられたままでは、絶対に生き延びる事は出来なかったに違いない。
そして、もしハンナとトマシュが2人共に翌年の45年の1月迄奇跡的に生き延びていたら、収容所から2人は解放されれば、結婚出来、一緒に生涯を共に暮せた筈だ。
しかし現実はそうはいかず、2人は離別する運命にあったのだが、32年後に再会する機会を得ると言う2人のこの運命も、神の悪戯と言う他はない話だ。
32年後の現在、ハンナはアメリカのNYで夫と2人の娘に恵まれ幸せな日々を送っているのだが、そんなハンナは偶然にも、生き別れてしまったトマシュはもう既に亡くなってしまったと思い、諦めて新たな人生を生き直さなければならず、その後の人生をトマシュの存在を封印して生きてきた彼女の前に、真実が明かされた時の彼女の困惑をカメラは静かに捉えるのだ。この控えめな演出こそが、悲劇を一層深く物語っていくのだ。
普通に、平和な社会で暮していても、初恋の人とはたとえ、結婚出来なくても、懐かしく心の何処かに隠れるように生きているものだ、しかしその人が自分を強制収容所から助け出してくれた命の恩人でもあり、その人の子供も妊娠していたのだから、生涯その人に対する思いは決して消える事など有り得ないはずだ!その彼女をカメラは常に静かに描き出すのだ。激震するハンナの心を淡々と静かに描く本作は素晴らしい作品だった!
少しも大袈裟に描こうとせずに、地味に徹しているが、その分力強い秀作であった!
この映画を制作するドイツ映画界も、また凄いと言わずにはいられない!
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