「厳格が生む奔放。」ラヴレース ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
厳格が生む奔放。
リンダ・ラヴレースという名前は、今作で初めて知った。
'72年「ディープ・スロート」という伝説のポルノ映画に出演し、
一躍時の人になったそうだ。興収は大変な額だったとか。
夫に仕込まれたその秘技は(想像の賜物)大変な技だろうが、
彼女がポルノ映画に出ることになった経緯を述べた自伝から
作られたという今作、なのでリンダ目線からのアプローチに
なっているのだが、なんとも女性には辛いことの連続殴打。
サラリと中盤までが描かれてのち、実はこの裏には…という、
リンダからの告発部分が描かれていく。彼女は夫からDVや
恫喝の恐怖に晒されており、ポルノ出演もその為だったのだ。
厳格な家庭に育ち、母親との関係に悩んでいたリンダ。
まだ十代で出産して里子に出した経験があるという、そんな
過去を話せる優しい(はずの)男、チャックに惹かれていく。
しかしチャックは結婚後、借金のカタに妻に客をとらせたり、
自分が妻に仕込んだ秘技をエサにポルノへの出演を迫る。
断りきれないリンダの意志とは裏腹に映画は大ヒット。
そんな莫大な映画収益もほとんどギャングに持っていかれ、
相変らずチャックは妻をイタぶり続ける。耐えられなくなった
リンダはついに家を出るのだったが…。
若気の至り。とは誰にでも経験のあることだが、女性はその
身体を傷つけ成長していく面があるため、観ていて真に辛い。
自分が好きになった男なんだから、バカでもクズでも仕方ない。
選んだ自分にも責任がある。
が、痛めつけられ、もはや愛の無くなった世界で脅えながら
生きていく必要もないのでは…今なら簡単にそう思える世界。
当時はいかに締め付けが強かったか。また、彼女の家は特に
そうだったのかもしれない。母親の告白(S・ストーンに見えない)
に泣けるシーンもあったが、アナタの娘にしてこの有様なのよ。
同じような生き方をする娘を毛嫌いする母親が辛くて堪らない。
こんな時、娘を助けてやれるのは同じ体験をしたアナタでしょ。
そう思わずにいられなかった。
ラストの6年後、母親と和解する彼女に安堵したものの、
リンダのその後の運命と、元夫の運命のリンクにやや驚いた。
(アマンダもピーターも熱演。しかし彼女は脱いでも清純派ね)