「僕の美しい人だから」ペーパーボーイ 真夏の引力 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
僕の美しい人だから
この映画、「ポップ1280」とか好きな人には、たまらないんじゃなかろうか。
舞台設定は1969年だが、ちょっと古めの1950年あたりのクライム、ジム・トンプスンとかハドリー・チェイスとか好きな人は、絶対はまるような気がする。(なんかピンポイントすぎる薦め方で気がひけるが…)
もちろん、そんなピンポイントなファンじゃなくても、豪勢なキャスト&練られたお話は充分魅力的だと思う。
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あと他の方も書いてらっしゃったが、すんばらしい童貞映画だと思った。
でもまあ、ほんとの少年がこれ観ちゃうと、大人になるの大変そう&面倒くさそうと思うかもしれないので、観ない方が良いかも。
一癖も二癖もある(癖ですませられるのか?)大人たちばかり出てきて、主人公の童貞&観客を困惑させるわけだが…。
ただ、単なるコケオドシのエロとグロを並べてみましたっていう映画ではなく、思いの外かなり真面目に作ってあって、なんでそんな大人達になっちゃったのかが、痛いほどよくわかる。腑に落ちないシーンは1つもないので、えらいなあと思った。
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なんといっても、
マシュー・マコノヒーとジョン・キューザックの刑務所での面会シーンが出色だった。
観客はそれを見て、「マコノヒーそういうことか…」と、なんとなく察する訳だが…。
それがラストに繋がっていて、落とし前の付け方に、唸るしかなかった。
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そして、ニコール・キッドマン。
最初は、どうしても彼女の「歯」が気になっちゃって…。メイクも服装も演技も田舎のヤサグレ女仕様なんだが、「歯」がハリウッド女優仕様でキレイすぎた。田舎のヤサグレ婆の歯はもっと汚い。田中絹代みたく歯を抜けとまでは言わんがなあ…。と思いながらも、段々演技に引き込まれ、ラストあたりでは気にならなくなっていた。
役柄も、ガス・バン・サント『誘う女』系のイヤな女かと思ったら、
『僕の美しい人だから』的な、むしろ良い婆系だった。
彼女が、お坊ちゃんの童貞君ではなく、死刑囚を選んでしまうあたりは、判りたくないけれど、納得するしかない哀しさだった。
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その他の登場人物も悲しくなるほど罪深い。
物語の愛と罰を静かに見続けるメイシー・グレイ(主人公の家のメイド役)の視点が、監督の視点なのかなあと思った。