「孤独で哀れな空気のような女」桃(タオ)さんのしあわせ momogaria-noさんの映画レビュー(感想・評価)
孤独で哀れな空気のような女
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桃さんは13才のとき、家族を日本との戦争でなくした。
それから60年、経済的に成功した梁家に召使いとして仕えた。
幼くして働き始め、お婆さんになるまで働くなんて・・・
当時の香港では、それが当たり前だったのだろうか?
私には想像しにくい、厳しい時代に彼女は生きていた。
60年も他人の家で過ごすというのは、どんな気持ちだろうか?
彼女は幸せだったのか?
ロジャーにとって桃さんは、幼い頃から母親の役割をしてくれた
空気のように、いて当たり前の存在だった。
桃さんが脳卒中で倒れてから・・・
ロジャーは、自分がこんな深い喪失感に襲われるとは、考えてもみなかっただろう。
実の母親以上にそばにいてくれた、この人の命に陰りが訪れている。
彼の幼い頃の写真や、おんぶ紐を彼女は嬉しそうに見せてくれた。
桃さんは血の繋がりのない自分を、愛して育ててくれていた。
そんなことに、今ごろ気がつく自分が情けなくなる。
それから、二人は血を超えた親密な関係を築いていく。
自分の親の介護なんて、なるべく考えないようにしている。
とても自分に務まりそうもないし。
桃さんは子供たちを尊い存在として愛していた。
よそ様から見たら、孤独な可愛そうな女性に過ぎない。
でも、生身の彼女は他の母親と変わりなく、愛することができた。
幸せな時間もあったのだきっと。
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