劇場公開日 2012年10月6日

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「泣けるだけじゃなかった」ツナグ ayumiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5泣けるだけじゃなかった

2014年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

泣ける

少し大げさな言い方かも知れないですが、「ツナグ」としての役割に葛藤する主人公を見ているうちに、生死観とか、そういう大きなものを考えさせられたような気がします。
どうしても震災のことを考えてしまいました。
私自身が家族を亡くした訳じゃないけれど、あの日、本当にたくさんの方が亡くなったっていうのは事実で、今、死んだ人に一度だけ会えるなら、という問いを残された人たちにしたら、一人ひとり違った、でも一様に大事な人の事を想う気持ちでいっぱいになるんだろうなぁって思いながら観ていました。それはあたたかい思い出であり、感謝であり、言いたかったけど言えなかった一言への後悔であり、お別れすることへの覚悟であり・・・そういった場面がこの映画でも違った形ではありますが描かれている訳で。

物語の冒頭、松阪くん演じる主人公はどこかひょうひょうとしているような印象を受けたのですが、自問自答したり、彼自身の優しさや思い出などによって少しずつ成長していく姿が見られて、最後まで清々しい気持ちで観ることのできる映画でした。

個人的にすごく印象に残ったのは、橋本愛ちゃんのお芝居。クールなイメージがどうしても強かったけど、親友の死に関係する後悔や懺悔のこもった迫真の演技は、映画と分かって観ていても、人間の感情がむき出しになった時に感じる一種の恐怖のようなものを感じずにはいられませんでした。

それから、やっぱり樹木希林さんは存在感が違うというか、オーラというか、ただそこに居るだけでお芝居になっているような感じがして、観ていて不思議な気持ちになりました。
以前に「悪人」とか「サイドカーに犬」で観た時もそんな印象を受けたような、もっと違う感じがしたような。素人目には難しいことはわからないけど、とにかく凄かったです(笑)

ちなみに、最初にツナグに依頼されて出てくる八千草薫さん、とってもチャーミングで、私もこういう風に歳をとれたらいいなぁって思いました。可愛いおばあちゃんになりたい。美人じゃなくっても、チャーミングなおばあちゃんに。

テーマは決して明るくはないはずなのに、観終わった時にはすっきりする、せつないけど悲しすぎない、いい映画でした。

如月十