テイク・ディス・ワルツのレビュー・感想・評価
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ミシェルウィリアムズ好きは必見
ミシェルはだいすきな女優さんの一人ですが、この作品は見逃しておりました…。
あの自然体の演技と、悲壮感のある表情が今作でも光ってましたな。
ただ、良い雰囲気は漂えど、深みに関して言えば、ない。
彼女の葛藤がメインに描かれるんだけど、結果的にやっぱり一人だなって。
欲で揺らぎ、一大決心をした女性の末路。
あのラストシーンはだいすきなんですけど、それまでの過程で
あのシーンに哀愁を感じさせるまでの説得力はなかった。気がする。
ただね~、あの悲しいシーンで、
明るい曲調であるラジオスターがかかるのが素晴らしい。
曲自体がそうだしね。
”止められない気持ち”を表してたりするのかな。
結局さ、別の男のところにいって、欲に溺れてるだけな気がしたんだよね。
本人もそれに気づいてラストシーンに繋がるんだろうけど…
それだけ。
プールのシーンとか初めてのときとか
あんなにいいのにね~
そもそも町がいいからね~
衝動と欲望と運命の狭間で。
いくつかの恋愛をしてきた人なら、既婚・未婚に関わらず、主人公に共感するはずだ。
恋の糸口を見つけると、人はそれがあたかも「そうなるべきだった」かの様に、振る舞い始める。
主人公マーゴは、夫と魅力的な男性との間で、顔をくしゃくしゃにして悩む。
(その姿が、愛らしい!けど危なっかしい!)
夫はいい人なんだけど、どこか噛み合わない。出会った男性はなんだかミステリアスでチャーミング。
パートナーとの関係が、安定していればしている程、心が揺れ動きそうな状況。
マーゴは、"I'm afraid of being afraid (不安でいる事が不安なの)"と作中で言ったり、自分に自信がなさそうだったり、素直じゃなさそうだったり... 世に言うこじらせ女子?な感じだから、さぁ大変!
監督サラ・ポーリーが、マーゴの表情の変化を丁寧に切り取るから、心の葛藤が手に取るように分かる。
恋をすると全てが"meant to be(そうなる運命)"に感じてしまうけれど、それは心がそう思うことを望んでいるから。
その"meant to be"こそが、一歩踏み出す勇気とか、ぐっと耐え忍ぶこととか、諦めることとか、そのすべての行動の原動力になる。
彼女は決断を下すけれど、その内容はどちらでも良くて、結局は心がその決断をどう思い続けられるか、なのだと思い知らされる。
夫のルーが、マーゴに毎日していたいたずらについて語る下りが忘れられない。
もしかしたら"meant to be"と、思えるのは今ではなく、何十年も先なのかもしれない。
木々の隙間から太陽が一筋差し。巧みなメタファー。サラ・ポーリーは監督業に専念すべき。
幸せに鈍感じゃない。
寂しさに敏感なだけ。
でも私は、全てに鈍感になりたいです。
小説家を諦めたマーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)は、ライターをしている。チキン料理のレシピ本を書いてる夫ルー(セス・ローゲン)とは、結婚五年目。子供はいない。が、傍目からは夫婦ラブラブだと思われています。
ある日、取材先で知り合ったダニエル(ルー・カービー)の家が、なんと向いだったと分かる!そして互いに気になり出して……。
夫のことを愛していて不倫願望もないのだけど、マーゴとダニエルは段々と惹かれていきます。
一人で道路を歩いてると、木々の隙間から太陽が一筋差して来て、それを見ると泣きたくなる。勿論私は大人だから、泣かないのよ。ってマーゴが語るところ、凄くよく分かると思った。これ、結婚生活の、人生のメタファーですよね。
でも大抵の人は、見なかったことにする。気付かない人もいる。
私の場合は、テーブルクロスの折り目が一カ所気になる感じ。そこが、なんか変なんです。一カ所だからいいじゃないっていう人もいるだろうし、それ自分で編み直せという人もいるだろうけど。そういうんじゃない。いつもそこを、指でゴシゴシしてしまう。そういうのが気にならない、鈍感な女になりたいです(こういう作品を、単なる不倫映画じゃない!とか言える女になりたいです)。
女優サラ・ポーリー、監督二作目です。サラは私が気になる折り目を、丁寧に描いてくれた。凄い!さっそく、監督一作目の「アウェイ・フロム・ハー君を想う」も年老いた夫婦の心の機微が、とてもよく描かれています。サラ監督はまだ若いのに、どうしてこんな題材で?と思いましたが、それは生い立ちに関係あるのかもしれません("物語る私たち"観賞済み)。
ダニエルは、画家の感性でそんなマーゴを見抜いてしまう。マーゴの影に、寂しげな別人格がいるような絵を描く。見抜かれるのって、怖いけど。なんか力が抜ける心地よさがあります。私も見抜いて欲しい。誰かに。
ダニエルは絵では食べていけないので、湖畔の傍で人力車で稼いでます。人力車!なんて可愛い仕事!そう、本作は凄くポップで可愛くて、でも女性の心の機微を表す秋風(セピア)色の映像が素敵なんです。その風景の中で、若干ぽっちゃり気味のミシェルが、流行遅れのワンピースを着て、The Buggles - Video Killed The Radio Starをバックにふわふわ揺れています。この全てが中途半端な可愛さが、堪らないです。
ダニエルは一見すると軽いので、直ぐにそういう関係になるのかな?と思うんですが、二人はキスさえしない。お互いにニコニコ見つめ合いながら、デートを重ねるだけです。
マーゴがダニエルに言うんですよ。
「三十年後にデートの約束をしましょう。夫に三十五年も尽くしたら、キスくらい許されると思うの」
うわー、ぐっと来た!
けど昼間のカフェでエロトークしたり、プールの中で触れそうで触れない、なんだか水圧で相手に触れる的な?高度なバーチャル・スイミング・セックスをしたりするんです。なんだこのシーン!凄いなぁ-。サラ・ポーリー監督!凄いわ!もう監督業に専念した方がいいと思う。
でもダニエルが引っ越して遠くに行くと思ったら、堪らなくなるんです。ルーに気持ちを、打ち明けます。
二者選択の瞬間です。
大好きなダニエルを思ってルーと暮らすか、ルーを捨てたことに罪悪感を抱えつつ、大好きなダニエルと生きるか。
実はここの部屋、急にシャワーが水になるんです。マーゴは壊れてた!っていつも怒る。でもこれ、ルーの悪戯だったんですよ。
「八十歳になったら、悪戯してたって告白するつもりだった」って。長い悪戯だろ?って。あぁ、泣く台詞です。
でもその工夫を、普段の生活に生かせばいいのにと思ってしまう。ごめんよ、ルー。
でも愛されてても、埋まらない孤独とか、消えない不安ってあるんですよね。心に刺さった釘が、どんどん錆びていく感じ。きっとそれは、ルーでは抜けないんです。食事する時ルーとの会話がないとか、ルーが退屈とか、優しいとか、そんなんじゃなくて。ルーはその釘すら、きっと見抜けない人なんです。残念ながら。
本作が好きなのは、マーゴは決意しそのリスクを負うから。それと現実と夢のバランスが凄くいいです。
二者選択。
選択、後悔、選択、後悔。人生はこの繰り返しのような気がする。ラスト、Corinna Rose & The Rusty Horse Band 「Green MountainState」の切ない歌声を聴きながら、そう思いました。
映画としてじゃなくて
胸に突き刺すものがあった。
悲しい映画。
こんなに悲しい映画と思わなかった。
どうしても埋められない心とか、そういうの、どうしようもないんだね。
終盤に義理のお姉さんが言ったことがホントに的を得ていた。
人生はどこか物足りないものよ。
みたいなこと。
その通りなんだろうなって…
人は何度も後悔と反省をする生き物だから、きっと、人生は致し方ないことばかりなんだ。
とても切ないけど、とても素敵な映画だった。
ラジオスターの悲劇が印象的。
浮気イクナイ‼ でもすてきすぎるかけひきで恋愛のいっちばん楽しいと...
浮気イクナイ‼
でもすてきすぎるかけひきで恋愛のいっちばん楽しいところを描けていると思った。
2回あるビデオスターの悲劇がBGMの遊園地のシーンが印象的。主人公の表情の変化がすごい。映像の美しさ、かわいさがすごく私好み。
トランジットの不安
マーゴがルーの髪や身体に触ったり、愛してるというのは、自分を彼の元に留めておくためのおまじないのようなもの。
彼女は“トランジット”が不安。
自分の心がルーから離れていってしまうのが怖い。“トランジット”の状態になってしまうのが。
でも、自分の心でさえ自分の思う通りにはならない。
もし、ダニエルがあんなに近くにいなければ、彼女のおまじないは効いたかもしれない。でも、彼はあまりにも近くにいた。
そして、ダニエルは彼女が自分の意思で彼を選ぶまで決して無理強いせずにじっと待っていた。
ルーの元から離れたマーゴに彼のアルコール依存症の姉ジェリーが言う。
「人生っていうのはどこか物足りなくて当然なの。抵抗するなんてバカみたい」
ダニエルと暮らすようになったマーゴ。
彼女はまたおまじないを始めていた。
ザ・バグルスの「ラジオスターの悲劇」は何度も聴いている筈なのに、こんなに切なく聴こえる曲だったとは。
満ち足りた時間なんて遊園地の乗り物のようにほんのつかの間でしかない。
それを象徴しているようで美しくも切ないラストシーンだった。
マーゴ役もこの作品自体もはM・ウィリアムズのイノセンスを感じさせる魅力なくして成立しなかったと思う。
違う女優、たとえ監督のサラ・ポーリーが演じたとしても、まったく違った作品になってしまったんじゃないかと思う。
「男女の愛」を描いた惜しい作品
サラ・ポーリーが手がけた2作目の作品だというが、とてもそうだとは思えない素晴らしいできだ。
まず注目すべきは登場人物らが発する台詞。一つ一つの台詞がそれぞれの気持ちを暗示している。そのときは何のことかよく分からなくても後々につながってくる物があるのだ。この巧みな台詞使いがこの映画のポイントであろう。
さらに映し出される映像もとても美しい。冒頭部分のピントの合っていない台所のシーンは幻想的で色鮮やかなのに、それでいて哀しさに満ちている。マーゴとダニエルが遊園地の乗り物に乗るシーン。きらびやかで楽しげな音楽がかかる中、二人は嬉しそうな表情から悲しそうな表情へと移り変わる。赤を基調とした映像から突然、くすんだような灰色っぽい映像に変わる。このそれぞれにマーゴを中心としたキャラクターの感情が込められている。
ただ残念なことに、好きなシーンが多かったのにも関わらず、僕はこの映画を心から愛することはできなかった。その最たる理由はマーゴに共感できなかったことだろう。ダニエルと初めて関係を持つシーンがあるのだが、あまりにもストレートな描き方なので正直少し引いてしまった。もちろんこれにも意味があり、「愛も初めは情熱的な盛り上がりを見せるが、結局は冷めてしまう」ことを表している。このテーマ性は理解できるが、それまでは幻想的な映像が多かったのに、急に方向転換されるとさすがに戸惑う。マーゴが余計に酷い人物に見えてしまうのだ。
だけど何度も言っているように全体的にはすごく好きだ。一番好きなシーンはダニエルが引っ張る人力車にマーゴとルーが乗るシーン。とても悲しくて胸が締め付けられる場面だ。反してカラフルな町中の映像が余計にそれを際立たせる。
映画の方向性をもう少し統一できれば、名作になれたかもしれない。だけどサラ・ポーリーに監督としての腕があることは間違いない。次回作に期待するとしよう。
(2012年9月2日鑑賞)
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