「「男女の愛」を描いた惜しい作品」テイク・ディス・ワルツ キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
「男女の愛」を描いた惜しい作品
サラ・ポーリーが手がけた2作目の作品だというが、とてもそうだとは思えない素晴らしいできだ。
まず注目すべきは登場人物らが発する台詞。一つ一つの台詞がそれぞれの気持ちを暗示している。そのときは何のことかよく分からなくても後々につながってくる物があるのだ。この巧みな台詞使いがこの映画のポイントであろう。
さらに映し出される映像もとても美しい。冒頭部分のピントの合っていない台所のシーンは幻想的で色鮮やかなのに、それでいて哀しさに満ちている。マーゴとダニエルが遊園地の乗り物に乗るシーン。きらびやかで楽しげな音楽がかかる中、二人は嬉しそうな表情から悲しそうな表情へと移り変わる。赤を基調とした映像から突然、くすんだような灰色っぽい映像に変わる。このそれぞれにマーゴを中心としたキャラクターの感情が込められている。
ただ残念なことに、好きなシーンが多かったのにも関わらず、僕はこの映画を心から愛することはできなかった。その最たる理由はマーゴに共感できなかったことだろう。ダニエルと初めて関係を持つシーンがあるのだが、あまりにもストレートな描き方なので正直少し引いてしまった。もちろんこれにも意味があり、「愛も初めは情熱的な盛り上がりを見せるが、結局は冷めてしまう」ことを表している。このテーマ性は理解できるが、それまでは幻想的な映像が多かったのに、急に方向転換されるとさすがに戸惑う。マーゴが余計に酷い人物に見えてしまうのだ。
だけど何度も言っているように全体的にはすごく好きだ。一番好きなシーンはダニエルが引っ張る人力車にマーゴとルーが乗るシーン。とても悲しくて胸が締め付けられる場面だ。反してカラフルな町中の映像が余計にそれを際立たせる。
映画の方向性をもう少し統一できれば、名作になれたかもしれない。だけどサラ・ポーリーに監督としての腕があることは間違いない。次回作に期待するとしよう。
(2012年9月2日鑑賞)