劇場公開日 2013年8月24日

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「意外と光るものがあるサメ映画」パニック・マーケット3D 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0意外と光るものがあるサメ映画

2025年4月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

驚く

斬新

【イントロダクション】
大地震による津波でスーパーマーケットに閉じ込められた人々が、迫り来るサメの脅威に立ち向かい、脱出を試みるB級パニック。
監督はキンブル・レンドール。脚本には、『ハイランダー/悪魔の戦士』(1986)、『バイオハザードⅢ』(2007)等で監督を務めてきたラッセル・マルケイ。
イタリア、ロシア、中国等で興行収入初登場1位を記録。劇場公開当時は、当時流行していた3D作品として上映された。

【ストーリー】
主人公ジョシュ(ゼイヴィア・サミュエル)は、婚約者のティナ(シャーニ・ヴィンソン)の兄ローリーと共にライフセーバーとして働いていた。
前日のパーティーによる二日酔いから、その日はジョシュの代わりにローリーが海へ出てブイを確認しに行った。しかし、突如ビーチにホオジロザメが襲来し、遊泳客を襲い始めた。ローリーの救出に向かったジョシュだったが、彼の目の前でローリーはサメの犠牲になってしまう。

それから1年後、ジョシュは自責の念からティナと別れ、スーパーマーケットの店員として働いていた。そこに偶然ティナが来店するが、彼女は新しい恋人と思われるスティーブンと共にいた。
万引き犯として警備員に捕えられたジェイミー(フィービー・トンキン)は、自身の行動のせいでスーパーで働く恋人のライアンもクビにしてしまう。更には、迎えに来た父親である警察官のトッド(マーティン・サックス)とも険悪なムードになってしまう。そこに突然、2人組の強盗ドイル(ジュリアン・マクマホン)とカービーが押し入り、トッドと一触触発になる。

すると、突如大地震が街を襲い、津波によってスーパーマーケットも崩壊・浸水してしまう。閉じ込められた人々は、浸水と共に侵入した2匹のサメにより身動きが取れなくなってしまう。

浸水が進む中、人々はサメの脅威に立ち向かい、脱出を余儀なくされる。

【感想】
B級サメ映画ながら、脚本が長年キャリアを積んできたラッセル・マルケイだからか、舞台設定へのお膳立ては丁寧であり、意外と侮れない作りにはなっている。災害前に自然界の変化を敏感に察知する動物達、大地震による津波描写、ラストに映される崩壊した街の様子は、ディザスター・ムービーとしての外連味も感じさせる。

冒頭のビーチでのサメ襲来シーンこそお粗末なCGだが、スーパーマーケット内での襲撃シーンの数々は中々の出来栄え。というのも、どうやらアニマトロニクスを用いたリアリティある撮影が成された様子。また、人々が閉じ込められる崩壊・浸水後のスーパーや駐車場の美術、人体損壊描写は低予算とは思えないくらいにクオリティが高い。そうした予算配分の工夫や苦労が見えて面白い。

ただし、与えられた状況下に対して、些か登場人物が多過ぎる印象。また、ドラマ部分が悉くテンプレート通り過ぎて、ジョシュとジェイミーの気まずい再会やヨリを戻すまでの流れは、シリアスなシーンのはずなのに思わず笑ってしまった。
御約束と言わんばかりの分かりやすい犠牲者から、皆を救う為に命を落とす者、パターンは様々だが、もう少し登場人物を少なくした方がキャラクターの掘り下げもしやすかっただろう。

更に言えば、シチュエーションスリラーに徹する意味でも、スーパーマーケットと地下駐車場でそれぞれ別々の物語が展開されるというのは、あまり上手いとは感じられなかった。2つの場所で閉じ込められた人々の行動が、思いがけず互いの行動をサポートする事に繋がる等の仕掛けがあれば、その存在意義も感じられたのだが。クライマックスで、ジョシュがショットガンやテーザー銃でサメを仕留めるシーンのカタルシスは良かったが、あれがローリーの仇だと分かる仕掛け(ローリーが付けた傷跡等)があれば、よりカタルシスが感じられたのではないかと思う。

マスク姿の強盗犯であるカービーが他人の遺体にマスクを被せて擬装し、正体を隠して生き残り組に紛れているという捻りは良かった。それがなければ、マジで何でコイツ居るの?なのだが。

【総評】
舞台設定の面白さ、意外にもしっかりとした脚本から、サメ映画としては佳作の部類に入るのだろう。しかし、もっと煮詰められる要素も多かったように思うし、そうした部分の詰めの甘さをカバーしていれば、新たなサメ映画の傑作にもなっていたであろうだけに残念。

それにしても、これ3D映画にするような作品だったのだろうか?

緋里阿 純
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