「『アイアン・スカイ』または私は如何にして心配するのを止めてスチームパンクを愛するようになったか」アイアン・スカイ まじさんさんの映画レビュー(感想・評価)
『アイアン・スカイ』または私は如何にして心配するのを止めてスチームパンクを愛するようになったか
月の裏側にナチスの残党が逃れ、第四帝国を築いているという機密情報を私が最初に知ったのは、小学生だった頃に読んだ、トレンド情報誌、月刊「ムー」の記事だった。
ナチスは敗戦後、精鋭たちを集め、新天地である月の裏側へ逃げ延び、第四帝国を建国したのだと言うのである。中には、ヒトラーが生き延びていると言う説や、その遺伝子が保存されていると言う説などがあり、月面には、本人、又はクローンが居ると言うのもあった。いずれにしろ機が熟したところで、再び彼らが地上に舞い降り、世界を恐怖によって侵略する事を目論んでいるのは明白であり、その日が近付いている。その事を知り、子どもながらに、不安になったり、恐れおののいたりしたものだ。
このように、月面ナチスは、今回だけのネタではなく、以前からまことしやかに囁かれて来た話なのだ。そして、月面ナチスが再び地上に舞い降りると言う、恐ろしい心配が現実となったのが、この映画だ。子ども頃の恐怖と戦いながら、この映画を観た。
それが見事な風刺の効いた一級のコメディに仕上がっていた!
70年間のギャップ。浦島太郎のような、時代錯誤がむしろカワイイ!『チャップリンの独裁者』が「総統を称える短編映画」として出てくるのも面白い!長年、真空管を用いたコンピュータを使ってきた月面ナチスがiPhoneに驚くのも無理はない。
だが、さすがは月面ナチス。それをすぐにモノにしてしまうのだ。
また、アメリカの大統領選挙に絡めているのも面白い。選挙ポスターが、総統のソレと同じデザインなのも、効いている。更に、選挙参謀に月面ナチスが着いたら当選は間違いない!
自国だけが優位に立とうとするアメリカと言う大国のエゴが、かつてのナチスのソレと大差なく見えてくる。そして、各国代表が月面ナチスに対抗すべく、ドーナツ状の巨大な円卓で会議を開くのだ。そこで繰り広げられる醜い争いは『博士の異常な愛情〜』のソレを意識した作りになっている。とても愉快だ。
また、70年進んだ月面ナチスのビックリどっきりメカも見所だ。UFOにタイガー戦車の砲台が付いて、実弾をぶっ放したり、母艦となる船はツェペリン号みたいな飛行船型。その動力源のほとんどが、蒸気機関と思われるメカなのだ!もう、リベット打ちされたボディと巨大なクランクでギア
が動くだけで、どうしてあんなにワクワクしてしまうのだろうか!
不謹慎と言われても構わない。月面ナチスはKawaii!(`_´)/
萌える映画だった。不謹慎は楽しいw