「独裁者あれこれ。」アイアン・スカイ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
独裁者あれこれ。
この本格的おバカSFに、SFファンやマニアはこぞって出資して、
約1億円のカンパを集めてしまったそう…あ~なんて平和なの^^;
どちらかといえば深夜のTVシリーズなんかでやりそうな感じを、
まさかの劇場公開に踏み切る強引さがまさにナチス、なのか?
某国(って隠すこともないか)への面当シニカル満載の風刺劇で、
いちいち台詞が凝っているので、かなりブラックに笑える内容。
でも観る人を選ぶことは間違いない作品^^;
たまたま観に行った回がガラガラで、お!貸し切りかと思ったら
あとからソロリ…と客足が。劇場入場者プレゼントを渡し忘れた
係員が、わざわざ座席まで持ってきたけど、こんなの要らないよ?
(ゴメンね)と思えるほどのカードごときで^^;この粗雑さがまたイイ。
ムリにお金を落としていただかなくても…(爆)っていう、
謙虚なのか上からなのか分からない、投げやり感もまたナチス的。
ストーリーはどうしたんですか^^;のあり得ない内容なんだけど、
使われる時代背景や台詞の数々、多くの名作をパロって賛美し、
SF的には(こっちは良く分からないけど^^;)スターレックとかいう、
スター・トレックをパロッた作品で名を知らしめた監督?らしくて
なかなか私的には面白かった。戦いの最中に国連会議っぽいのが
開かれてるんだけど、その現場がもうメチャクチャで、最後の動乱
までの展開もいちいちブラックなところが笑える。
もちろん知っている名前も多数登場、ちゃんと条約を取り決めたのに
アンタの国はなんで破ってんのよ!?的なところも明確すぎ^^;
でもアタシの国はいーのよ!なんたってアメリカなんだからねって、
誰かにソックリな女性大統領が堂々と宣言する場面、あーそうだね、
だからアンタの国はやられるのよね、って無言で返せること請け合い。
ここは笑えるというより、頷きながら苦笑い、といった感覚。
劇中で「チャップリンの独裁者」が使われているんだけど、
そのナチスはこれを都合のいい10分足らずの短編映画として編集し、
子供達に観せていたのだ。これには笑えた。
のちにアメリカで本編を観た主人公レナーテ(この人可愛くて美人)が、
こんなに長い作品だったのね…と打ち拉がれているのに大笑い。
閉鎖された世界で誤った情報教育を受けることの恐ろしさは、
日本人もあの拉致問題で帰国した多くの被害者の方を見て理解した。
おバカ映画とはいえ、さり気ないメッセージも活きている?
ナチスに拉致された黒人モデルのワシントンが、アーリア系白人に
されたのに気づかず、よぉ!ブラザー!って乗り込むところも好き。
あらゆるシーンでナチスを愚弄している本作だが、舞台がアメリカだ
っていう、先日観た(こちらもおバカな)ディクテーターと合わせて、
来る方も迎える方もどっちもどっち^^;ってやつでしょうかねぇ。
そもそもナチスの演説をまんま米大統領に演説させて大喝采って^^;
…目クソ鼻クソもいいとこだもんね。
(詰めが甘い脚本ながら発想は素敵。今作で資金稼いでまた次回作?)