劇場公開日 2012年9月28日

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「月に代わっておしおきよ!」アイアン・スカイ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0月に代わっておしおきよ!

2019年1月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

雑に紹介すると、"ナチスが月に代わっておしおきよ"。初の女性合衆国大統領(スローガンは"Yes, she can!")が自身のPRの為に黒人宇宙飛行士(本職はモデル)を月へ送るが、月面探査中に謎の組織に拉致される。彼らは第二次大戦後月に逃亡したナチの残党の末裔で、数十年に渡って地球への帰還の機会を窺っていたのだった。組織は黒人が持っていたスマホを動力源にすることで巨大宇宙船を起動させることが出来ることを発見し狂喜するが、すぐにバッテリー切れ(そりゃそうでしょうとも・・・)。スマホを補給するための密使を地球に派遣するが、それをきっかけに地上がとんでもない事態になっていく。

単なるスラップスティックなバカ映画かと思いきやさにあらず、現代世相を思いっきり風刺し倒した数々のギャグがいちいちウェルメイド。ナチの密使を自身の選挙活動に利用する大統領選スタッフ、エゴ剥き出しでいがみ合う各国首脳、チャップリンの『独裁者』が総統閣下を礼讃したプロパガンダだと盲信する月の住民、彼らを支配するナチ残党と世代交代を画策する若手士官、それぞれの立場の人間が織りなすドラマが驚天動地のエンディングに雪崩れ込む様が恐ろしいくらいにサラっと描かれていて凶悪極まりないです。もう少し描写がグロくてもよかったとは思いますが、そうするとこんな田舎のシネコンでは観れない可能性が高くなったでしょうから結果オーライとしましょう。
カタルシス全開のカタストロフィに被さるエンドクレジットには夥しい数の個人出資者たちの名前がズラリ。出資を募るトレーラーを見てこれは観たい!と思った人たちの熱意がこういう痛快な映画の原動力になる、そんなところにも感動しました。

よね