「病院食がおいしくない理由」大統領の料理人 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
病院食がおいしくない理由
そして、ダイエット食で頑張ろうとしても続かない理由。
それがわかれば、オルタンスのすばらしさは一目瞭然。
対して、大統領官邸の料理人のダメさも一目瞭然。
「”自分”のために作られる料理」それが、どんなにその人の心に滋養を与えるか、そんなことはわかりきっているはずなのに。
オルタンスが叫ぶ。「しきたりのことは教えてくれるけれど、大統領がどんな料理を好むのか、大統領のことは誰も教えてくれない!!!」
大統領が好む”家庭料理”がそんなに高価だとは思えない。キャベツにサーモン。私の貧乏生活だって作れるかも。まあ、同じキャベツでも安価なのから高価なのまでピンキリではありますが。
エピソードで出てくる、大統領が嫌っている料理の方が、高価だし、カロリー高そう。
カロリーを考えて、一点豪華主義。他でカロリーを抑える。そんな提案・工夫をオルタンスはするが受け入れられない。
(ダイエットも、すべてのカロリーを抑えるのではなく、一品だけ好きなもの食べて他で抑えた方が続く)
カロリーとコストだけを考えて饗される料理なんて、サプリメントを摂取しているのと一緒。
ストレスフルな役職だからこそ、自分にとって心に染み入る料理が心の健康のためにも必要なんだけれどもな。
心が健康であれば、多少のことは乗り切れるんだけれどな。
しきたり・しきたり・しきたり。
オルタンスが仕入れた食材だって、単に交通費とかのコストがかかるというだけでなく、
それまでの業者を無視して、調達係を無視したところが問題なんだろう。
そこが、クライエントのために最高のものを出したいオルタンスには理解できない。
南極で手に入る限られた食材でさえ使いこなすオルタンスだもの、予算内で最高の食材を探し出して調理することは可能なはず。
でも、そういう”勝手に動かれること”が、大統領府の気に障るのだろう。
唖然としたのが、大統領でさえ、エリゼ宮にとっては代わりの利く存在なんだってこと。唯一無二の存在ではない。
確かに、選挙で負ければ次の大統領が入ってくる。その繰り返し。
だから大統領の好みに合わせて気に入られるより、
エリゼ宮としてのしきたりを守る方が大切なんだろう。
大統領のひんしゅくを買ったって、首が切られるわけではないだろうし。
しかし、そんな料理、フードロスが多そうだな。
おいしそうな料理を見て、心の栄養が得られると思って鑑賞。
そうしたら、自分の職場と同じ、分かり合えない同僚との確執を見せられて、げんなり。
予告に騙された感じ。だから評価も低くなってしまう。
加えて、南極の場面端折っていいから、
オルタンスの味方とのやり取り、嫌がらせをする方をもう少し丁寧に描いてほしかった。そうしたら、同じ境遇にくさくさしている私のカタルシスにもなっただろうに。
しかし、ロブションさんてすごいのね。一回だけしか名刺交換したことのない方の料理すら覚えているなんて。感動してしまいました。