チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢のレビュー・感想・評価
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ちっぽけな芸術家の生涯
あるバイオリニストの生涯を、独自の手法で、時にコミカルに、時に悲劇的に描いた映画。
ストーリーテラーが、終始語りかける体裁を保つが、やがて彼の死が近づくと、アニメ調になったり、悪魔が現れたりと、あの手この手で観客の興味を惹こうとする。
特に、悲劇的な別れを経験したあとで、開眼するバイオリニストの演奏のシーンは
素晴らしい。それだけで映画が一本撮れたろうに。
過去の偉大なアーティストは、悲劇的な生涯を語られることが多い。
彼は、とてもそうは見えない。
愛されていると気づかない、わがままな変人。この映画が気に入らない理由は、彼のことを好きになれないから。
2013.12.6
【マルジャン・サトラビが自身のパンド・デ・シネ「鶏のプラム煮」を実写化した作品。故に不思議な風合を醸し出している哀しき、ファンタスティックロマンス作品。】
ー 天才ヴァイオリニスト、ナセル(マチュー・アマレリック)が思い返す人生と悲恋を、独特のビジュアルセンスで紡ぎ出した作品。
◆感想
・パンド・デ・シネを劇中に挿入しながら、天才ヴァイオリニスト、ナセルが本当は小さな頃からナセルが好きだったファランギースを妻にしながらも、愛せずに彼女に大切なヴァイオリンを壊されてしまう過程を時系列を逆にしながら描く。
・物語は、彼が人生を悲観して自室に閉じこもり死に至る8日間を主に描く。
・ファランギースが、ナセルが好きだった”鶏のプラム煮”を作るが、ナセルは背を向け食べようとはしない。
- 歯車が狂ってしまった哀しき夫婦。-
・ナセルが若き頃、恋に落ちたイラーヌを演じた若きゴルシフテ・ファラハニの美しき事、限りなし。
- 老いた彼女が、ナセルと偶然町で出会った際に、”知りません・・”と言った後に流す涙。
そして、ナセルの葬儀に人知れず立ち会う姿・・。ー
<人生は糾える縄の如し。
あの時に、もう少し素直になっていれば・・。
もっと頑張って反対する父親を説得して、愛する人を妻にしていれば・・。
ナセルもファランギースもイラーヌの姿も、哀しい。
不思議な風合の、人形劇の様な哀しくも愛しき作品である。>
異国情緒ある独特なフランス映画
どこに感動要素があるのか分からなかった。人生賛歌という感じもしなかった。
楽器を失ったことで死を選び、ベッドで死ぬまでの8日間を描いた話。何か行動を起こすわけでもなく人生を振り返る。
フランス映画っぽさとテヘランという異国情緒とが不思議な雰囲気を醸し出している。
幼い頃の兄弟2人の学校での容赦ない扱いの差だったり、子供2人のその後の姿だったり、死を司るアズラエルの話であったり、独特のドライな雰囲気があった。
いくら愛していたといってもバイオリンを壊し、たかが楽器と言った妻の行動は許せないなと思った。
こんなに綺麗な人がこの世にはいる
それにしても
「男の子のおもちやを壊す」のはご法度です。
男の子の宝物を壊したり勝手に捨てたり、これは一生許せない心のしこりになります。言葉のあやではなく一生癒えない失望と敵意だけがPTSD として残るんですよ!
僕は古い真空管ラジオを家人から「ゴミだと思った」と捨てられてしまったんですが。
ナセル・アリにとっては「ヴァイオリン」と「思い出」は命。
それは大切な宝物で、命の支えだったのです。
「たかが楽器」、この妻の一言で楽器だけでなく夫婦仲も修復不可能になりました。
「仕事より夢より私を愛して」と夫に要求するのは結婚生活における最大の禁句なんですがねー。
おとぎ話仕立ての悲恋物語でした。
パリ在住のイラン人女性漫画家が原作者。女性なのにここまで男の心を見破るとは、アーティスト恐るべし。
あるある感がふんだんで笑えたりもしますが、おとぎ話って真理契機を秘めていますから心に残るのですね。
他レビューにもありましたが妻や子供をほったらかしのこの男を責めるのはナンセンスです。理屈や常識のお話ではありません。
だれも納得は出来ない人生の不条理。しかし「これが人生なのだよ」と語るのがおとぎ話。
エンディング、
彼のヴァイオリンがラジオから流れて涙するイラーヌ。泣けます。
イラーヌ役のゴルシフテ・ファラニの関連作を調べてみようかと思ったがやめました。
美しい彼女の思い出だけを壊さずに僕もそっと心のうちに秘めておきたいと願うほどの出逢いです。
バーグマンの娘、マストロヤンニとドヌーブの愛娘、そしてこの煌めく銀幕の恋人イラーヌ。
壮々たる出演者。
ジャスミンの押し花が切ないね。
素晴らしい映画
フランス映画はあまり得意ではないけれどタイトルに惹かれて何となくみました。我が儘なバイオリン弾きが家族の甲斐性もなく破壊的な生き方をしているなぁと思って観ていました。
死を覚悟してからも、真剣なのに滑稽でたまらなく愛しい主人公。寓話的なお話に逸れながら、話が逸脱することなく、主人公の世界観を超越して活かしている作品の見所にただただ感心するばかり。
最終的に美しい彼女との儚い恋の物語を知り、芸術家としての命は、その恋と共に合ったのだと知って切なくなりました。
奥さんも可哀相。子ども、弟も可哀相。誰一人悪い人はいない。主人公自身も愛されていたはずなのに、自分の願いは叶わなかった、というドラマティックな悲恋のストーリー。
チキンとプラム煮の甘酸っぱい味が心に広がるような感覚。それぞれの存在感と世界観と物語のシュールさ、見事に融合。心に残る作品となりました。
主人公に共感出来ないのに感動的な物語
バイオリニストのナセル・アリは、大切なバイオリンを妻に壊され自暴自棄になり自殺することにした。最後の日々を過ごす中で回想する若き日の思い出・・・切ないラブストーリーのようですが全然違います。主人公がものすごいエゴイストで家族に酷い仕打ちを強いていることに全く無自覚なので、バイオリンを壊されるのも因果応報としか思えない話。また絶望して死ぬと決めたものの思い切った自殺ができないために繰り出される笑えないギャグの連発に首をかしげているところに優雅に現れるヒロイン、イラーヌの圧倒的な美しさの前で全てが打ち消され、物語が全く反対側に振り切る。これほど主人公にさっぱり共感出来ないまま感動的に終わる映画はそうはないと思います。
舞台はテヘランですが背景はかなりお粗末な描き割り。この辺り原作と共同監督を務めるのが『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピであることを念頭に置いていないと独特のタイム感に全く乗れないかも知れません。『彼女が消えた浜辺』にも出ていたイラーヌ役のゴルシフテ・ファラハニがとにかく美しいのでこれをスクリーンで観られなかったのが悔やまれます。
んーフランス特有の
んーーフランス映画特有の、途中でよーわからんなる現象起きたな〜〜笑
どうしてこうも変な?って言ったらあれだけど、
これを芸術と呼ぶのかもしれないけど、
とにかくストーリーがわからんくなる!笑
まー、この映画は完全にわからない!ってなるわけではないけど、
途中で集中切れちゃう感じだったなー。
BGMみたいにしながら見ちゃったー途中から。
死の床で甦る 美しい記憶
本作の主人公、ナセル・アリはバイオリニスト。最愛の人だったイレーヌとの愛をあきらめたことによって、彼の辛い魂のかけらが 一つの吐息となり、美しい音色を持った芸術を生み出したということ。
なんて切ない悲恋と運命の物語かと思いますが、それだけではなく、こちらの印象的な色彩やアニメーションなど、映像で趣向を凝らしいる部分も充分楽しめました。
また悲劇の男アリも、マチュー・アマルリックの魅力なのでしょうか。
死へ向かう8日間もそこまで悲劇的にはどうしても思えず、ちょうどいい緩加減で、本のページを遡るような感じに、記憶の紐をほどいていく感じでした。
ただ、終盤に一気にメロドラマ調になると、清らかなイレーヌの伝えられなかった思いを垣間見ることになり、忘れがたいラストになったと思いました(3.8点)
人生讃歌♪
「すぐにでも もう一度 観たい!!」
そう思わせる小気味良さと美しさ。うっとりする様な気品とは また別の、何とも御伽話チック(←敢えて/笑)な軽やかさと人を喰った様な展開。これを味わっている内に物語が持つ“丁度良い重さ”の魅力に どっぷり。登場人物も、出て来る道具/小物の数々も、決して重すぎず、且つ見事な役割を与えられており、ピタリと嵌まった瞬間に得も言われぬ感動を呼ぶ。
極めて欧州的な温かみある色使いや今作の一つの鍵となる violin を始めとする弦楽器のシラベに身と心を任せて、人生の儚さに ホロリ。
師走の慌ただしさに、一筋の安らぎを もたらす人生賛歌◎
逸品っっ♪♪
序盤に引きつけられた割に・・・
初っ端の切り絵のような美しい映像で心をとらわれた割に、見れば見るほど眠くなる作品。(○´∀`○)ときどき、息継ぎするように美女や死に神が出てきて最後までみれるかなぁ、と思ったけど、全然観れなかった。残念。
甘く苦い愛の記憶
音楽家の命ともいえる楽器を壊されたバイオリニスト、ナセル・アリは代わりのバイオリンを探し求めるが、ほかのバイオリンではどうしても彼の思うような音を奏でることが出来ない。もう音楽を奏でる喜びを感じることが出来ないと悟った彼は死を決意する。
死を望む彼の反応は少し過剰に感じられるが、死までの8日間に壊されたバイオリンが彼にとってどんなに大事なものだったのか?
そのバイオリンで奏でる音が彼にどんな喜びをもたらしたのかがあきらかになる。
その音色には、彼が手に入れることの出来なかった愛の甘く苦い記憶が宿っていたのだ。
『ベルセポリス』で自らのコミックをアニメーションにしたマルジャン・サトラビが再び自らのコミックを実写で映画化するということでどんな作品になっているのか興味深く観たが、「昔々あるところで〜」で始まる昔話のように普遍的な愛の寓話になっている。
アニメーションを思わせる背景とセット撮影の相性はとてもよく、アニメーションパートも効果的に使われていた。
あふれる涙が止まらない、感動の名作。
本題の前に何点か話しておきたい。
先ず、この映画は辛抱強く見続けて欲しい。
ナカナカしんどいと思うが、せめて50分迄は見て欲しい、それで嫌ならそら仕方ないよ?
俺的に?映画てのはハナからの30分が基本だ。
そこ迄におもろくなければ(引き込む事が出来なければ)、その映画は駄作だ!
(↑例外はMロランの●オーケストラ!だけだ。)
だから、本作も序盤そんな気配がぷんぷんだった。
でもね?
これは素晴らしいよ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
嫌な人が一人も登場しない映画、てのがたまに有る。(●ミスポターとか?)
これは序盤真逆で嫌な人しか登場しない。
でもね?
違うんだな?
そうではなく、実は・・
て、言えない!
言えないから、是々非々に見て欲しい!
これは素晴らしい名作だよ〜(つД`)ノ(つД`)ノ(つД`)ノ
伯爵、准品質保証作品に認定♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪
素晴らしいです。
〜〜〜
人生でたった一度の恋を信じるか?信じないか?
それはどうでも良い。
なぜなら?そんな恋は存在するから・・。
だが、人生は等価交換だ。
何かを得て、何かカケガエノナイモノを失うモノだ。
一人の男の腕に凝縮された想い、人生が・・
形を無くした時、それは生きながらの屍になり、屍の延命にしか過ぎなくなる。
・・まさに、全てが朽ち色褪せる・・。
輝きを失った太陽の下、男は歩き出す。
・・俺は自殺なんて絶対に許せないし、そんな題材の映画も大嫌いだ。
でも、今一度言おう。
こちら、感動の名作です。
・・映画好きなら必見( T_T)( T_T)( T_T)/
”リアル”なファンタジー
監督のマルジャン・サトラピ自身による同名グラフィック・ノベルの実写映画化である。原作がコミックなので、全体的にファンタジックな作りになっている。サトラピがイランに帰国せずフランスに在住しているため、町並みも全てセットで製作された物である。それが逆にストーリーと相まって、見事なほどに調和している。
出演陣も素晴らしい。主演のマチュー・アマルリックは妙にぎょろっとした目で人を見つめ、ナセル・アリの失われた心をそのまま表現している。回想シーンと今現在の様子は見た目がほとんど変わらないのに、彼の目を見るだけでその2つが全く違うことが分かるのだ。
そのナセル・アリは物語のかなり序盤で死ぬ。その死ぬまでの8日間を描いている。はじめは自殺しようとして、いくつか方法を考えるのだがこのシーンが最高にシュールで笑える。そこから1〜3日目ぐらいまでは人の死生観を皮肉ったような描き方をする。極めつけは3日目の時。結局いい死に方が思いつかず、彼はベッドでじっと死を待つことにするのだが、3日目にもなると暇でしょうがなくなるのだ。なんとも滑稽だが、それと同時に妙にぞっとする。このバランスがとにかく絶妙なのだ(6日目はそのピークだろう)。
しかし、ナセル・アリの妻ファランギースのバックグラウンドが明かされると物語のトーンが変わる。彼女は普段の態度と違い、ナセル・アリを愛していた。そしてナセル・アリの愛を欲していた。なぜ愛されないのか理由も分からず、夫は空虚な目をするだけ。それでも彼女は彼を愛し続けた。初めは(その他の登場人物が言うように)ただのムカつく女だと思っていたのに、こんなエピソードを知ってしまったら、感動せざる負えない。この時点でやっとこの物語が「愛と死」の話だと判明するのだ。他に「愛と死」にまつわるエピソードで胸を打つのがナセル・アリとその母親の話。詳しくは言わないが、映画の中でも最も繊細で愛に満ちあふれている。
そして映画はナセル・アリの引き裂かれた恋の話へと向かっていく。バイオリンがいったい彼の何を象徴していたのか、その意味が分かったとき間違いなく涙するだろう。惜しむべきは一つ一つのエピソードが丁寧なせいで、映画全体が少々散漫であること。それでも徐々に一つのストーリーへと収束していく様は見事としか言いようが無い。
この映画の感動を文面で伝えるには限界がある。あなたの目で直接見てほしい。
(2012年12月12日鑑賞)
今年一番
ファンタジーなのに、ほどほどに重い。
個人的には、ことし一番印象に残った映画です。
ほどほどに重い、けど、ファンタジックで、日頃の疲れが癒されました。
ストーリーだけみると、平凡な話なのだけど、ストーリーの組立がうまく、秀逸な作品になっていると思います。
フランス映画を初めて味わったよう
試写と劇場で2回鑑賞しましたが、試写の際に寝てしまい、劇場で再確認という形で観に行きました。
正直前半は内容がよくわからず、置いてけぼりをくらっている気持ちになりましたが、ラスト10分間は圧巻でした。
この10分間に向けて、それまでの話があり、一点に収束していく高揚感と爽快感が鑑賞後も清々しい気持ちにさせてくれます。
ラスト10分間を観るためにもう一回観に行きたくなりました。
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