「結末に驚き、そしてガッカリなのだが。自由な生き方を是とするメッセージ性の有る映画なのかも」ローマ法王の休日 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
結末に驚き、そしてガッカリなのだが。自由な生き方を是とするメッセージ性の有る映画なのかも
制作脚本監督のナンニ・モレッティ による2011年製作(104分/G)のイタリア・フランス合作映画。原題または英題:Habemus Papam、配給:ギャガ、劇場公開日:2012年7月21日。
物語は、予定調和的に主人公はローマの街を放浪して庶民と交流する末に、新法王としての責務を引き受けるものと予想していた。しかし、その予想は裏切られ、意外な結末を迎える。この展開には正直驚かされたし、かなりがっかりもした。
観客の予想を裏切るだけなら誰にでもできる。観客の期待に応えながら、予想の少し上をいく展開を見せることこそ、映画プロの手腕ではないかと。
ただ、日本人的な保守的価値観では「選ばれたからには頑張って何とか責任を果たすべき」という考えは根強い。だが、それは本当に正しいのか?
よくよく考えたうえで、自分にはその役割を担えないとし、そこから逃げることも、過当なストレスを背負わない一つの人間らしい選択ではないか?制作脚本も兼ねたモレッティ監督は、そんな問いを観客に投げかけたかったのかもしれない。
また、劇中では枢機卿たちが精神科医(演じるのは監督自身)の導きのもと、バレーボールに興じる場面が描かれる。「カトリック教会の指導者たちにも、遊びや心のゆとりが必要だ」というメッセージなのかな。
あまり面白くは感じなかったが、堅苦しい制度や役割の枠を超えた、もっと自由な人間性への目配せはまあ感じられた。
監督ナンニ・モレッティ、製作ナンニ・モレッティ 、ドメニコ・プロカッチ、脚本ナンニ・モレッティ 、フランチェスコ・ピッコロ 、フェデリカ・ポントレモーリ、撮影アレッサンドロ・ペシ、美術パオラ・ビザーリ、衣装リーナ・ネルリ・タビアーニ、編集エズメラルダ・カラブリア、音楽フランコ・ピエルサンティ。
出演
メルビル(ローマ法王)ミシェル・ピッコリ、精神科医・男ナンニ・モレッティ、
バチカン報道官イエルジー・スチュエル、グレゴリー枢機卿レナート・スカルパ
精神科医・女マルゲリータ・ブイ。