「クマのぬいぐるみじゃないよ、ビーバー人形だよ」それでも、愛してる 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
クマのぬいぐるみじゃないよ、ビーバー人形だよ
鬱病を患った玩具会社社長ウォルター。そんな彼を救ったのは、ビーバー人形だった…。
まず主人公を、メル・ギブソンが演じているのが意外。
タフなイメージのあるメルが、鬱に苦しみ、家族や人生に悩む主人公を繊細に演じる。
ひとえにジョディ・フォスターの采配もある。
メルがあの発言でハリウッドから干された時もメルを擁護し、今回監督として(妻役も兼任)、メルから新たな一面を引き出した。
持つべきものは友。
ビーバー人形に救われてから、片時も人形を離さないウォルター。
ちなみにこの映画はファンタジーではない。喋るクマのぬいぐるみの映画みたいに、人形に命が宿っている訳じゃない。
腹話術のように喋る…と言うより、ウォルターが人形を介して、自身を代弁するのだ。
なかなか変な感じもするが、誰にだって自分の本心を言えない時がある。そういう時、代弁して貰った経験もある筈。ウォルターの場合、それがたまたまビーバー人形なだけ。
(人形片手に喋るメルが何だか可愛らしい)
ビーバー人形を手にしてから、鬱も克服し、仕事も復帰、家族との関係も良好。全てが良い方向に。
…ところが見ていたら、妙な違和感を感じた。
まさかジョディ・フォスターが、毒にも薬にもならないファミリー・ムービーを作る訳がない。
もしそうであっても、展開は淡々としているし、何処か冷たさを感じる作風。
予感は的中した。終盤、思わぬ展開へ。
シビアでもある。ドキリともする。
ありのままの自分で居る事、それを受け入れる事は、苦しいかもしれない。
しかし、一番身近に居る家族は、“アナタ”で居て欲しいと願う。
その時こそ本当の意味で、人形を手離す事が出来るのだ。
それにしても、この邦題は…。
原題の“ビーバー”のままでいいと思う。